スコティッシュフォールド(左)とポメラニアン
スコティッシュフォールド(左)とポメラニアン
ブームにより飼育数が急激に変化
ブームにより飼育数が急激に変化
太田匡彦(おおた・まさひこ)/1976年東京都生まれ。98年東京大学文学部卒。読売新聞東京本社を経て2001年朝日新聞社入社。経済部記者、『AERA』編集部記者、メディアラボ主査などを経て16年4月から現職。著書に『犬を殺すのは誰か ペット流通の闇』(朝日新聞出版)、共著に『動物のいのちを考える』(朔北社)などがある
太田匡彦(おおた・まさひこ)/1976年東京都生まれ。98年東京大学文学部卒。読売新聞東京本社を経て2001年朝日新聞社入社。経済部記者、『AERA』編集部記者、メディアラボ主査などを経て16年4月から現職。著書に『犬を殺すのは誰か ペット流通の闇』(朝日新聞出版)、共著に『動物のいのちを考える』(朔北社)などがある
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「かわいくて」「癒される」ペットのブームの影で、過剰繁殖、飼育放棄といった社会問題が顕在化。動物愛護の観点からペット問題を長年取材してきた記者が、メディアの果たすべき責任を鋭く指摘する。

●ペットの「流行」の裏で何が行われているか

 「なんと言っても犬はポメ、はスコです」

 昨夏、東京都内で繁殖業者を集めて行われた大手ペットショップチェーン主催のシンポジウム。登壇した同チェーン幹部は「テレビCMの効果がすごい」などと解説しながら、これから繁殖を行っていくべきだと考える犬種、猫種をそれぞれ一つずつあげた。

 「ポメ」とは、ソフトバンクのCMで「ギガちゃん」と名付けられたポメラニアンのこと。「スコ」はワイモバイルのCMで「ふてネコ」として有名になったスコティッシュフォールドだ。テレビCMによってポメとスコの人気に火がついており、ペット店の店頭では圧倒的な売れ筋になっているというのだ。だからペット店は、取引のある業者に繁殖をすすめる。

 「過去にチワワやミニチュア・ダックスフント、柴犬が人気になったときと同じです。繁殖計画の参考にされたらいかがでしょう」

 テレビと動物コンテンツの関係を考えるとき、やはりこの「ブーム」という側面についてまず触れていくべきだろう。

 ペット店チェーンの幹部が例示するまでもなく、過去に「流行犬種」は繰り返し作られてきた。たとえば漫画『動物のお医者さん』シリーズによって、1990年代前半にはシベリアンハスキーが爆発的に流行った。2002年にはアイフルのCMにチワワの「くぅ~ちゃん」が登場し、チワワブームが起きた。これらのブームは、犬の飼育数そのものにも影響を与えたと考えられている。

 特定の犬種や猫種についてブームが起こる――。発端はCMや漫画だったかもしれないが、ブームを大きなものにする主要なプレーヤーはやはりテレビ(番組)だ。流行りの犬種や猫種を情報番組やバラエティ番組に登場させ、ときにはその子犬や子猫をスタジオに連れ出し、「かわいさ」を多角的に印象づける。結果として多くの視聴者が、かわいいと強く思わされ、飼いたい(買いたい)と考えることを肯定された気分になっていく。

 いつも不思議に思う。テレビの番組制作の現場では皆、このことに痛痒を感じていないのだろうか、と。ブームのツケは最終的に、犬や猫たちが払うことになるのに……。ハスキーブームやチワワブームの後には、各自治体の収容施設にこれらの犬種があふれ、また野山に大量に棄てられて野犬化し、社会問題になった。

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