3月1日は2018年卒業予定者に向けた企業の求人広報活動解禁日。大学生の就活がいよいよ本格的にスタートする。
石渡嶺司『キレイゴトぬきの就活論』は就活のハウツーでもなく就活をめぐる社会批評でもなく、就活のメカニズムを明かしたと称する本。〈文学部生はマスコミ、理学部生は化学メーカーや地質調査会社、司書課程履修者は図書館司書をそれぞれ志望する〉けれど、実際には〈少数(本当にごくごく少数である)が志望企業に内定し、圧倒的多数の学生は志望企業とは別の企業に就職する〉。それが現実。
だが、就活生の多くは「就活では夢こそ大事」と「就活に夢はいらない」という二つの言説に挟まれて混乱している。で、子どもの頃からなじみのある有名企業(テレビ局、テーマパーク、食品・飲料メーカー、航空など)を受験して「入社するのが夢でした」などと面接で語るわけだが……。
実際の企業は〈「夢」を語る学生の多さにうんざりとしている。もっと言えば、「夢の中で暮らしてください、うちではお断り」とすら、内心は思っている〉。そりゃそうだ。花形企業の花形部署に夢(だけが)多き新入社員が配属されるわけないもんね。
そもそも志望動機が間違っているのだと著者。就活生が書く「よくある志望動機」とは(カッコ内は採用担当者のつぶやき)。
自分自身を成長させたい(自分勝手だね)、貴社製品が好き(一生うちのファンでいて/有名企業)、貴社製品が好き(ウソだろ/無名企業)、社会貢献をしたい(どの会社も社会貢献はしてる)、人を笑顔にしたい(どの会社も笑顔にしようとしてる)など。
では企業はどんな学生を求めているのか。〈学生の相当数と一部の論客や社会人は、「大企業に採用される学生=すごい学生=わかりやすい実績のある学生」と思い込んでいる〉が、〈企業は「普通の学生」で十分と考えている〉。その「普通」とは何かが問題なんだけど。就活を控えた学生さんや親御さんの頭を切り替えるのには役立つ本かもしれない。
※週刊朝日 2016年3月10日号