
首位を独走する阪神。不動のリードオフマンとして打線を牽引するのが、近本光司だ。今季はリーグトップの安打数と盗塁数をマークし、自身初の首位打者を狙える位置にもつけている。
近本の強みは好不調の波が少なく、コンスタントに高い水準のパフォーマンスを発揮していることだ。入団してから昨年までの6シーズンで盗塁王を5度獲得。21年は最多安打(178本)のタイトルを獲得している。今年6月7日のオリックス戦で通算1000安打に到達した。プロ7年目での到達は、巨人・長嶋茂雄らに並ぶ日本人最速タイ記録だった。
他球団のスコアラーは、近本の打撃についてこう語る。
「足の速さがフォーカスされますが、直球をきっちりはじき返してパンチ力がある。長打だけを狙ったら、本塁打をもっと量産できると思いますよ。あと、相手を見て野球ができる数少ない選手ですね。内野の守備陣形を見てセーフティーバントを仕掛けたり、野手のいない場所に巧みなバットコントロールで打球を飛ばしたりできる。稼働率を含め、今のプロ野球界で最高のリードオフマンだと思います」
中堅の守備でもゴールデングラブ賞を4度受賞。俊足を生かした広い守備範囲で球際に強い。肩が強いわけではないが、捕球してからの送球が正確なことに定評がある。走攻守でチームを支えてきた近本だが、8月19日に国内FA権を取得し、オフの去就が注目されている。
昨オフの契約更改では5000万円増の推定年俸3億7000万円でサイン。球団から複数年の大型契約を提示されたが、単年契約で勝負することを選択したことが報じられた。阪神を取材するライターは「FA権の取得は野球人生を考えるターニングポイントなので熟考すると思いますが、阪神残留の可能性が高いと思います」と予測する。
「淡路島出身で地元愛が強く、生活の拠点を関西から移すことはイメージしにくい。チームが黄金期を築く状態であることも残留を後押しすると思います。昨オフに同学年の大山悠輔がFA権を行使し、巨人移籍が有力視されましたが残留した。近本はうれしかったでしょう。環境を変えてリスタートするより、気心知れた仲間たちと何度も優勝したいという感情になるのではないでしょうか」