
――しかし、自民党内でうまくやっていくには、「わきまえる女」でなければならない。
バランスが難しいです。昔は正しいことを言えば、ついてきてもらえると思っていましたが、人間社会では相手の気持ちも考えなければなりません。女性議員は男性議員と比べて早く登用されることもあるため、「あいつは生意気だ」という見方をされます。その気持ちには共感はしませんが、「そういう考えもあるのか」と受け止められなかったのは反省点です。
女性が首相になることで…
――政治家としてのキャリアが長くなると、より多くの人と会い、見えていなかった現実を知るようになります。それを政策に反映することは「成熟」だと思いますが、稲田さんの場合は「変質」と言われることも。
守るべきものは守っています。ただ、20年前と今では会っている人も、経験もまったく違います。その中で考えが変わることは恥ずかしいことではありません。変えなければ進歩はなく、社会も変わります。守るべきものを守るためにも、変えるべきことは変える。目の前の困っている人をなぜ救わないのか? おかしいでしょ。
――もし、違う人生で政治家になるとしても、自民党から出馬しますか。
私の原点は戦後レジームからの脱却であり、憲法改正や歴史認識の問題に取り組むことです。それは自民党でなければ達成できません。ただ、今のあり方は変えたいと思います。そのためには、女性議員にももっと発言してほしいですね。例えば夫婦別姓の議題でも、女性議員たちは、なかなか自らの意見を発しません。発言すればたたかれたり、仲間を失ったりすることもあるからでしょう。しかし、女性ならではの考えがあるはずです。意見を言うべきときに、言える政治家であってほしい。
――今後、日本で初の女性首相が出る可能性もありますが、稲田さんは?
気持ちはありますよ。ただ、そんな簡単な話ではないこともわかっています。それでも、これから女性首相が出る可能性は十分あります。高市早苗さんは、先の総裁選では非常に近いところまでいった。女性が首相になることによって、見える景色も違ってくるでしょう。
(聞き手・構成/AERA編集部・古寺雄大)
こちらの記事もおすすめ 豊田真由子が見たセクハラ横行の自民党「年配の男性議員に手を握られ…」“過剰順応”する女性議員の現実