かつてほど離婚が珍しくはなくなっている。苦しい結婚生活を続けることなく、新たなスタートを切るために必要なことはなんだろうか(写真:gettyimages)
かつてほど離婚が珍しくはなくなっている。苦しい結婚生活を続けることなく、新たなスタートを切るために必要なことはなんだろうか(写真:gettyimages)
この記事の写真をすべて見る

 人口が集中する東京は離婚も多いイメージを持つかもしれないが、実はデータで見ると地方の方が離婚率は高い。その要因として、若い女性の都市部への流出や地方の雇用環境に関連があるようだ。AERA 2025年8月25日号より。

【気になるデータ】都道府県別離婚化指数(グラフ)

*  *  *

 東京は離婚が多く、地方は少ない。

 そう思っている人は多いかもしれない。だが、データを見ると逆だ。

 厚生労働省の人口動態調査によると、2023年の全国の婚姻件数は47万4741組、離婚件数は18万3814組。この結果から算出された離婚率は1.52(人口千対)となる。都道府県別にみると、トップは沖縄の2.20(同)。対して、東京は1.49(同)で全国平均を下回った。

 ただ、離婚率は、離婚が比較的多い若い世代が少ない地方の場合はどうしても低くなってしまう。地域ごとの実態をよりリアルに読み解く指標として、ニッセイ基礎研究所・人口動態シニアリサーチャーの天野馨南子さんが提唱するのが「離婚化指数」だ。

 一定期間の婚姻届に対する離婚届の割合を示すもので、地域でどれだけ結婚が成立し、どれだけ離婚が発生しているかを見ることができる。

 まず、全体の数字を見ると、23年は全国で約47万組が結婚し、約18万組が離婚している。つまり、離婚化指数は38.7%。「3組に1組以上が離婚」している計算だ。

 それを念頭に、天野さんは13年から23年までの都道府県別の婚姻届と離婚届の数を集め、約10年間の平均離婚化指数を算出した。すると、離婚化指数が最も高かったのは、高知で45.7%。次いで、宮崎44.8%、沖縄44.5%、北海道と和歌山が43.7%だった。いずれも「約2組に1組が離婚」する水準であることがわかった。

 その結果をうけて、天野さんは、こう指摘する。

「沖縄を除けば、これらの地域では離婚数は平均的でも、結婚数が大きく減っていました。高知では、24年に20代女性の社会減が4.5%と全国ワーストでした。若い女性がいなければ、結婚はそもそも起きにくいのです」

結婚に希望を持てるか

 若い女性が地域から流出していく背景には、雇用環境の問題がある。そもそも就職先が少ないことに加え、男女の賃金格差が大きい地域もあり、より良い働く場所を求めて都市部を目指すケースが増えている。

「今の若い男女は、結婚後は仕事と家庭を両立させながら、夫婦二馬力で生活したいと考えています」と天野さん。つまり、それが「結婚」のスタンダードになりつつあるなか、雇用環境が整っていない状況では安心して結婚に踏み切れないのだ。天野さんは話す。

「離婚化指数をみれば、その地域で若い世代が結婚に希望を持てるか、結婚を維持できるかがわかります」

(編集部・井上有紀子)

AERA 2025年8月25日号より
AERA 2025年8月25日号より

AERA 2025年8月25日号より抜粋

こちらの記事もおすすめ 【もっと読む】給与を奪われ、80円のペンを買ったら怒鳴られた それでも離婚調停は不成立に 藤井セイラさんに聞く「DV避難の困難さ」
[AERA最新号はこちら]