5kgあたり2500〜3000円程度が妥当
昔と違って農業機械や生産資材、人件費などが高騰する現在、農家の経営継続が可能な収益を考えると、米の適正価格は生産者米価で60kgあたり2万円を基本とするのが妥当だろうと思います。
となると、銘柄や売り手にもよりますが、店頭販売価格は5kgあたり2500〜3500円程度が想定されます。この価格帯を考えると、確かに去年から今年にかけて米価は急騰したといえるでしょう。ただし、近年の生産者米価が60kgあたり1万円台と長らく低迷していたことを踏まえると、上げ幅の全てを「高騰」と捉えるのではなく、ある程度は「回復」したと捉えるべきだと思います。
これまでの安さに慣れてしまっている消費者にとっては受け入れ難いことかもしれませんが、今後は5kgあたり1500〜2000円の米が流通することはないでしょう。むしろ、以前は米が安すぎる異常事態であったという認識を持ってもらえるよう、生産者と国はきちんと伝えていかなければならないと思います。安い米価は、もう過去のものなのです。
米価高騰の原因は需給バランスの乱れ
なお、昨年からの米価高騰の直接の原因は、需給バランスの乱れです。令和5、6年産の米の供給が想定された需要を下回ったことで、民間在庫が大幅に減少し、需要に対して供給が不足したから価格が上がったのです。米は保存のきく作物なので、こうした過去の生産減の影響が時限装置のように後でやってくることがあります。
基本的には需要と供給は年間を通して一定の数量で推移しますが、大幅に減少した民間在庫から考えても、各卸売業者等が売り先への恒常的な供給のため在庫の確保に走ったこと、各種メディアが必要以上に米不足を煽ったことによって過剰需要が発生し、需給バランスが崩れていたと考えます。
そしてそれに対する備蓄米の放出が当初競争入札によるものだったために、需要に即応できるスピードを有していなかったことは事実です。果たして、随意契約による直接取引が始まってしばらくが経ちますが、今後の備蓄米運用も含めて解決しなければならない課題は多いのではないでしょうか。