全国戦没者追悼式の会場を出る天皇陛下と皇后雅子さま。陛下の表情は厳しく、追悼の辞を全身で受け止めているかのようだった=2025年8月15日午後0時23分、東京都千代田区
全国戦没者追悼式の会場を出る天皇陛下と皇后雅子さま。陛下の表情は厳しく、追悼の辞を全身で受け止めているかのようだった=2025年8月15日午後0時23分、東京都千代田区
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 8月15日、天皇陛下は皇后雅子さまとともに310万人の戦没者を偲ぶ全国戦没者追悼式に出席。全国から集まった3358人の遺族や参列者とともに黙とうを捧げた。戦後80年を迎えた今年、陛下の「おことば」には、新たな表現も盛り込まれた。高齢化が進む戦没者の遺族。その胸中には割り切れない思いも残る。

【写真】硫黄島で献花する天皇陛下と皇后雅子さま

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 軽く握ったこぶしを膝の上に添え、武道館会場の壇上に座る天皇陛下の表情は、厳しい。

 石破茂首相、衆参両院議長、戦没者遺族代表らが順に壇上で追悼の辞を述べてゆく。そのたびに、陛下は椅子に座り直し、体を壇上に向ける。

 いつもの柔和な表情はなく、ひとりひとりの辞を体に刻むように、受け止める陛下。

 その隣に座る皇后雅子さまは、会場にまっすぐ視線を向けている。視線の先には、全国から集まった戦没者の遺族らの姿があった。

 この日、千代田区の日本武道館では、およそ310万人の戦没者を偲ぶ全国戦没者追悼式が行われた。

 正午に合わせて陛下と雅子さまは、標柱の前まで歩み出て、黙とうを捧げた。

「戦中・戦後の苦難を今後とも語り継ぎ、私たち皆で心を合わせ、将来にわたって平和と人々の幸せを希求し続けていくことを心から願います」

 続いて述べた陛下のおことばには、戦後80年を迎えたいま、戦争の記憶の継承を願うお気持ちが込められていた。

 陛下は、2月の誕生日会見で、戦後80年にむけた思いを、「各地で亡くなられた方々や、苦難の道を歩まれた方々に、改めて心を寄せていきたい」と述べている。

 その言葉通り、陛下と皇后雅子さまは、これまでの「令和の慰霊の旅」のなかで先の大戦におけるいくつかの象徴的な土地を訪れている。

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