19歳、「ワル」だった頃の遊佐学さん(本人提供)
19歳、「ワル」だった頃の遊佐学さん(本人提供)

自宅マンションから飛び降り

 教会に行ったのは、そんな30歳のころ。キリストを見つめながらなぜか涙があふれ、その一週間後に、記憶もなく理由もわからないまま、自宅マンションの5階から飛び降りた。今からちょうど、20年前。2005年の8月9日のことだ。

 3日後、集中治療室で目覚めた遊佐さん。右足を粉砕骨折するなどの重傷を負ったが、命に別条はなかった。神様と出会った直後の奇跡に、今までなかった感情が芽生えた。

「生きてて良かった。自分は神様に生かされているんだ」

 だが、それでも、遊佐さんは変わることができなかった。

2度目の刑務所行き

 退院した後、この覚醒剤の一件で遊佐さんは刑務所に入った。面会に来た妹に泣かれた。「お父さんが脳梗塞になったんだよ。兄ちゃんのせいだ!」

 もうあいつはだめだ、と組を破門になった。出所後に故郷に戻ると、父が目の前で顔をくしゃくしゃにして泣いた。でも、何も変えられない。クスリにまた手を出した。

 その後、覚醒剤をめぐってまた逮捕され、2度目の刑務所行きとなった。

「ムショに戻ったとき、『俺の人生っていったいなんなんだろうな』って初めて思ったんですよ。神様に生かされたのに、それでも何も変わらない。でも、何をどうすればいいんだ? やり直すって、どうやるんだ?って」

一冊の本と出合った

 その刑務所で、一冊の本とたまたま出合った。同じように覚醒剤に溺れ、刑務所で聖書と出合って改心し、牧師として人生をやり直した元ヤクザの実話だった。

「俺と同じような人間なのに、変われた人がいる。書かれている内容が、心にぴったり刺さったんですよ。こんな俺でもやり直せるかもしれないって思えたんです」

 刑務所で聖書を読みあさっていると、ある言葉に目がとまった。

《人間にはできないことも、神にはできる》

「俺ひとりでは無理でも、神様を信じれば変われるかもしれない。それでもダメなら、もう人生をあきらめよう。人生を変えたくて、ワラにすがったんです」

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