デンマーク国立フィルハーモニー管弦楽団と共演したときに、廣津留さんがアンコールで弾いた曲とは(撮影/吉松伸太郎)
デンマーク国立フィルハーモニー管弦楽団と共演したときに、廣津留さんがアンコールで弾いた曲とは(撮影/吉松伸太郎)

 以前、イギリス人のテノール歌手の来日公演に観客として聴きに行ったとき、アンコールで「庭の千草」を日本語で歌っていたのを聴いてはっとしたんですよね。この曲はもともとアイルランド民謡ではあるのですが、その歌手の方は日本公演に合わせて日本語の歌詞を覚えて披露してくれたんです。日頃、自分が舞台に立つ側だと、演者にはいろいろな国の人がいることが当たり前すぎて国の違いをそこまで意識しないのですが、聴く側になったときに「ああ、違う国の歌手から、私の母国語で聴けるなんてすごい」と、深く感動しました。

 そういう心遣いは、海外から来た方々と共演する際には私も実践したいなと思っていて。今年5月にデンマーク国立フィルと共演したときに、アンコールにデンマーク民謡をアレンジした楽曲を感謝の印として演奏しました。デンマーク人の団員の方が終演後に「あのアンコールよかったね」と声をかけてくれたうえに、オケが舞台からはけていく際に「これってあの曲だよね?」みたいな感じで同じメロディーを弾いていた団員の方がいたと、観客の方のSNSのコメントで知りました。こちらの感謝の気持ちが伝わったようで、すごくうれしかったですね。英語で会話することはできるけれど、言葉だけではない部分でもコミュニケーションをとることって大事だなと思います。

Q. 海外のオーケストラとの共演でびっくりしたことはありますか?

A. 海外のオーケストラはユニオン(労働組合)が強くてしっかりしているところでしょうか。一定の演奏時間を超えたら必ず所定の長さの休憩時間を挟まないといけないなど、日本よりもルールが徹底している感じがします。アメリカでもそうでしたが、オーケストラのリハーサルでも決められた時間が過ぎたら、必ず誰かが「もう時間です」と声を上げますね。オーケストラに限らず、海外のミュージカルなども同様のことが多いと聞いたことがあります。

 なので、日本に招いたときにうっかり休憩時間を考慮せずに予定を組んでしまうと、当日になって休憩時間をとるためにリハーサルの時間を削るという事態も起こりえます。日本にいるとなかなかそういった感覚がないですが……。でもそれだけ、アーティストが守られているんだなと実感しますね。

構成/岩本恵美 衣装協力/BEAMS

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