昨年10~12月に放映されたドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」で一気にブレイクした星野源。『そして生活はつづく』は「音楽家・俳優・文筆家」という肩書を持つ彼の初のエッセイ集である。単行本が出版されたのは2009年。13年に文庫化。ドラマ人気で昨年12月に増刷され現在33刷。やっぱ人気者だったんだね。

 なんだけど内容は全然人気者らしくない。携帯電話の料金の支払い請求書が来ても、なんだかんだでいつまでも支払えない。気がつけば貧乏ゆすりをしているし、新しい箸一膳買うにも迷いまくる。不動産屋で「ご職業は?」と聞かれれば動揺し、どういうわけか洗面台はいつもビシャビシャだ。

 仕事仲間いわく〈そういうの残念な人って言うんですよ、星野さん〉〈外側はしっかりしてるのに内側がダメな人のことです〉。
 そもそも〈私は、生活というものがすごく苦手だ〉と自覚する人が〈つまらない毎日の生活をおもしろがること〉をテーマにつづったエッセイだから、しょうもない日常の話題が多いのだけど、ご両親の話はおもしろい。

 母を「ようこちゃん」と呼んで育った一人っ子の星野。父にたかいたかいをされ、少し宙に浮いて写った幼少時の写真を見ながら母はいった。〈源はね。このとき、宇宙から落ちてきたのよ〉〈だから源は、宇宙から落ちてきた星の王子様なの〉。本当かと問う6歳の息子に父もまた〈ああ、本当だ〉。そして本人は〈友達にその話をして「ばかかよ」と言われるまで、私はしばらく宇宙人としての自覚を持つようになる〉。
 集団は苦手。ひとりが好き。

 かつては〈周りにうまく合わせられないことに罪悪感を感じていたのだけど〉、〈みんなばらばらでいいじゃないか。そう思えるようになってからはずいぶんと楽になった〉。こういうタイプの人が、いまはむしろ好まれるのよね。又吉直樹君や若林正恭君のエッセイもこんな感じだった。

 草食男子とも異なる個食男子?ちなみに本書の裏タイトルは「くそして生活はつづく」だそうだ。

週刊朝日 2016年2月10日号