
そう聞いて、当時の新聞を調べてみた。ありました。毎日新聞の1999年2月10日の夕刊で、「東京都内で野菜主体のスーパーを経営する秋葉弘道さん(30)」が、「話題性重視の(報道の)姿勢が誤解を招いている。金銭的、精神的に被害を受けた人たちに対する責任をどう取るのか」と語ったとある。そして四半世紀が経った今も、同じように生産者や消費者の味方。「56歳になった秋葉弘道さん」は、今回の物価高への国の対策についても一家言も二家言も持っている。
「例えば卵が高くて生産者が困っているとなれば、国が出すのは一時しのぎの補助金。もしエサが高騰しているのなら、エサを安くする仕組みを考えなくてはいけないよね。でもそれは時間がかかって、選挙の武器にはならないのかな。一時しのぎを続けても、何も状況は変わらないのにね」
秋葉がコメンテーターとして引っ張りダコになったのには、二つ理由があるといわれている。ひとつは、すぐにコメントをくれるというフットワークのよさだ。

ちなみに私が初めてアキダイに取材したのは、3年ほど前。普通、市場の動向を大手スーパーに取材しようとすると、まずは広報に企画書を送り、質問を送り……。担当者と話ができるのは、早くても1~2日後。コンプライアンス違反が会社の息の根を止めてしまうこともある今日この頃。許可を出すまでに検討する時間が必要になるのも、わからなくもない。
ただしこうなると、例えば野菜のことを聞こうにも、申し込みをした時とは天候が変わっていることもある。ハンディカメラひとつ、スマホひとつでニュースを送れる時代になっても、リアルタイムに発信できる情報はむしろ減っているのだ。
一方、アキダイはどうだろう。取材の申し込みの電話をして、秋葉が「いいですよ~」と言えばアポ入れ完了。朝電話して午後にコメントがほしいような急な取材でも、なんとか時間の都合をつけてくれる。私も含めた取材する側にとっては、神様のようにありがたい存在と思っている人も少なくなかった。
(文中敬称略)(文・福光恵)
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