

味噌汁やお新香のおかわりも廃止された。国産米のごはんは大盛りにできるが、おかわりは100円、鮮魚のあらを使った味噌汁も2杯目以降は70円が別途かかる。
筆者は東銀座店を訪ねてみた。店内の雰囲気は大衆居酒屋とは異なり、高級感漂う居酒屋へと変わっていた。店の奥の壁には、歌舞伎の松羽目が描かれている。
夜のメニューも激安路線ではない。1978円の「本日の刺身盛り合わせ」、548円の「たこの唐揚げ」、698円の「真たこ刺身」、768円の「黄金かに炒飯」など、リーズナブルというよりは、価格に見合った商品ラインナップとなっている。


味にも違いがあった。よくあるチェーン居酒屋のような、カチカチに凍った刺し身を急速解凍した“びしょびしょ感”はなく、釣りたてのような濃厚な味わいだ。聞けば、その日の朝に水揚げされたものや豊洲市場で活〆された鮮魚のみを使用しているという。
「当時は本当に薄利多売」
「500円ランチが登場した頃はバブル崩壊の影響もあり、世の中は圧倒的な安さを求めていました」
そう語るのは、さくら水産を運営するテラケンの営業部(商品担当)次長の山下大輔さん。
「創業者・寺田謙二顧問は『団塊の世代にたくさん食べさせてあげてほしい』という思いを強く持っていました。当時は本当に薄利多売で、連日お客様の行列ができるほどの盛況ぶりでした」
すでに閉店したが天王洲店では、ランチの定食は1日600〜800食提供されていたため、生卵も1日600個以上を用意していたという。同社の営業部部長の輿石雅成さんは、こう振り返る。
「1日200〜300人程度来ていただければ、多少の利益は出たかもしれません。ただ、実際のところ、ランチの定食は夜の居酒屋に来店してもらうための広告的な意味合いが強かった。とはいえ、原材料費が年々高騰し、採算が取れなくなりました」
