
新たなスターを生み出すきっかけに?
現在、K-POPを代表する大手芸能事務所の創業者たちは、パン氏のほかにも不祥事に巻き込まれて経営の第一線から退いたり、深刻なリスクを抱えていたりする状況もある。
たとえば、EXOや少女時代などで知られるSMエンターテインメントの創業者であり人気スターの発掘にも関わってきたイ・スマン氏。経営権をめぐる内紛や株価操作などの不正取引の疑いで調査対象になり、2023年にはHYBEに自身が保有していたSM株を売却し、筆頭株主から退いた。BIGBANGを生み出したYGエンターテインメントの創業者ヤン・ヒョンソク氏も、脅迫などの疑いで起訴され、19~23年までYGを離れていた。
いずれの事務所も、かつてのような輝きを取り戻せていない。
業界人やファンの口も重い。今回のHYBEやパン氏をめぐる一連のスキャンダルに対し、BTSファンのひとりがようやく口を開いてくれた。
「パンさんは特別な人。でもHYBEの子会社のADORが抱えるNewJeansの契約解除問題や、女性インフルエンサーとの米国への同行疑惑、そして今回の投資詐欺疑惑のような悪い話ばかりが続いています。せめてパンさんには、事件が終息するまでは経営やプロデュースから距離を置いてほしい」
韓国のエンターテインメント業界は動揺を隠せない。韓国のエンターテインメント関連のPR会社で働く記者の知人はこう言う。
「今回のスキャンダルは事務所だけでなく、業界全体が注目しています。投資家に対する巨額詐欺の疑いという点でも事態は深刻です」
K-POPがここまで成長できた背景には、小規模な事務所が実力あるアーティストを育て上げ、世界的成功をつかんだというサクセスストーリーがあった。しかし近年は、少数の大手芸能事務所に過度に依存して人気をつくり、その構造が問題視もされてきた。だとするなら一連の騒動は実は、かつてのように小規模な事務所が、新たなスターを生み出す契機になるのかもしれない。
(現地ジャーナリスト ノ・ミンハ)
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