HYBE本社(写真:Lee Jae Won/アフロRM)
HYBE本社(写真:Lee Jae Won/アフロRM)
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 韓国の芸能界が揺れている。震源は大手芸能事務所HYBEだ。特に創業者であるパン・シヒョク取締役会議長の不正取引疑惑の影響は大きく、株価にも影響は出始めた。K-POP全体に打撃が及ぶ可能性もささやかれている。

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 現地検察は5月29日、元幹部のインサイダー取引疑惑でHYBE本社の家宅捜索を行った。また韓国メディアはこの日、パン氏が捜査を受ける可能性も報道した。パン氏をめぐっては、HYBEのIPO(新規公開株式)計画がないと投資家に説明する一方、保有株を知人が設立した私募ファンドに売却するよう勧誘。さらに同ファンドと、売却益の30%を分け合う契約を交わし、約4000億ウォン(約400億円)を得たという疑惑が持ち上がっていた。

金大中氏が大統領に就任すると…

 一連の騒動の影響はHYBEの株価の動きに表れた。6月23日から7月4日までの間に、HYBEのKOSPI株価は前の水準から10.42%も下落した。しかしこの時点では、「HYBEの売上が急減する」との見通しを示す証券アナリストはいなかった。

 ところが、金融委員会がパン氏を召喚して調査を行ったというニュースが伝わると、再び株価は値下がり。株主らの間では、「パン氏がHYBEから退くことで、株価下落による株主の損失を回避すべきだ」との声も上がっていた。

 さらに韓国メディアは9日、現地金融当局が、パン氏を資本市場法の詐欺的な不正取引の疑いで検察に刑事告発する方針を決めたと報じるなど、騒動は拡大している。

 これらは、単にHYBEやパン氏個人の問題にとどまらない。ある日刊紙の芸能部記者はこう言う。

「BTSが在籍するなどK-POPの中心である芸能事務所が、巨額詐欺に絡んでいるとすれば、K-POP自体も世界的な打撃を受ける。関係者は薄氷を踏むような思いで捜査の経緯を見ているはずです」

 そもそも国内市場が小さかったため、文化コンテンツを海外に展開せざるを得なかった韓国。文化大統領を自称した金大中氏は1998年に大統領に就任すると、文化振興策を打ち出し、コンテンツは世界的に売り出された。そしてK-POPなどが人気になる韓流ブームが起こった。今回の事態は“国策”の退潮にもつながりかねない。

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