■伊之助や隊士たちを見守る人々
穏やかに語りかけるひさの何気ないひとことが、伊之助の寂しさを癒していきました。伊之助はひさから「平和な日常」「見守られる日々の穏やかさ」を教えられました。そして、ひさもまた伊之助たちに特別な思いを持っています。彼女はいつも物静かで、感情を強く表現することはなかったのですが、心の中でいつも彼らを心配していました。
どのような時でも
誇り高く生きて下さいませ
ご武運を…
(藤の花の家紋の老女・ひさ/4巻・第28話「緊急の呼び出し」)
かつて鬼狩りに救われたという老女・ひさ。鬼との遭遇という壮絶な体験の後に、彼女は傷ついた鬼殺隊の世話をし、隊士たちの無事を願うようになります。生きて帰ってきてほしい、死なないでほしい、傷つかないでほしい、そんな言葉をたくさん飲み込んで、隊士たちの後ろ姿を見送ります。
ひさの思いは伊之助を強く、優しく変えていきました。平和な夜明けを願って、ひさたちは朝が来るまで祈り続けることでしょう。
《新刊『鬼滅月想譚 ――「鬼滅の刃」無限城戦の宿命論』では、伊之助の成長がさらに詳述されている。伊之助が「強く」「優しく」なる機縁となった、炭治郎たちと胡蝶しのぶとの出会い。上弦の鬼・童磨との戦闘、栗花落カナヲとの共闘についての分析も収録されている。》

鬼滅月想譚 『鬼滅の刃』無限城戦の宿命論