――そのあいだにかかる時間は?

 数秒ですよ。僕はオフィシャルのカメラマンじゃないから、いつどこでレーザー演出があるのかも事前に聞いてない。曲が始まってレーザーが発光して初めて、「あっ、レーザーだ、撮らなきゃ」ってなって、シャッタースピードを落として、露出補正を1/3ずつ落としていって、「ここだ」というところを見つける。レーザーとかの演出がある時は激しい動きが多いので、メンバーが並んだ全景を撮って、その後は特定の一人を狙って1/640秒にシャッタースピードを戻して、露出補正も戻してアップを撮る。曲のテンポがゆっくりになってメンバーが横に並んできたらまたシャッタースピードを落として撮る。だから僕を横で見てると「なんかカメラをカチャカチャやってるな」と思われるかもしれません。僕は別にカメラ(撮影)を学校で習ったわけでもなく、師匠がいるわけでもない。編集部のコスト削減のために、自分で写真も撮れということから撮り始めたので。

■ダンスと一緒に、自分の体も動いてます

――僕も編集者だったことがありますが、やはり経費削減のために何でもやらされました。写真については、「LPレコードのジャケットを正方形に近づけて撮ることの難しさ」を痛感しました。フィルムはフジのネオパン100、スキャナーが普及していなかった大昔の話です。

 最初は写真の撮り方も知らなかったですよ(笑)。あるローカルアイドルのグループを撮っているうちに、「一眼レフじゃなきゃ連写できないぞ」とか、「レンズも望遠とか広角とかいろいろないと撮れないぞ」とか、いろいろ覚えた。とりあえずステージ上で十何人の女の子たちが動き回っているので、全員撮るぞ! とただ撮りまくって。それと同時進行で、ファンは客席で輪になって叫んでいる。じゃあ、その輪のど真ん中に入って魚眼レンズで撮ってみようとか。魚眼を上に向けると肩を組んだひとたちが360度に拡がって、すごいなと。これが2012年ぐらいですか。そのうち、上級機じゃないとだめだって思って、キヤノンの5DマークⅢを買って。でも、シャッターの耐久回数ってだいたい15万回なんです。1回のライヴで1万枚撮ることが毎月2回も3回もあると、(シャッターの)動きがちょっと怪しくなってくる。それで最上級モデルの1DXに買い替えたら、連写も速いしフォーカスも速いし、狙った通りの画が撮れるようになりました。

――ライヴの時、機材をどのように使い分けますか?

 基本、メインで使っているのはEF28-300㎜(F3.5-5.6L IS USM)のレンズですね。引き(広角)とアップ(望遠)を1本で、連続的に済ませたいので。(アイドル系のウェブで)よくあるのが、1曲の中でメンバーみんなが盛り上がっているところは引きで撮って、次にアップでひとりずつ抜いていくという写真です。ダンス・フォーメーションに関係ない写真が並ぶので、個人的にはつまらないんです。最前に入れる場合は、超広角レンズのEF16-35㎜(F4L IS USM)も持っていくと、ダイナミックな画が撮れます。ステージの近くに行けるのなら、その2本がいいですね。
 新宿BLAZEの後方、操作卓(?)あたりからの撮影だと、前述のEF28-300㎜と単焦点のEF400㎜(F5.6L USM)の2本体制で行きます。400㎜で、20mぐらい離れたところにいるアイドルを追っかけていく。単焦点だからズーミングが利かないので、“そこ”しか見えないんですよ(笑)。気が付くと、ダンスと一緒に自分の体も動いてますね(笑)。
 AKIBAカルチャーズ劇場の場合は最前に入ることが多いので、EF16-35㎜とEF24-70㎜(F2.8LII USM)を使うことが多いですね。EF24-105㎜(F4LII USM)がいまだに入手できないので。そうそう、これを見てほしいんですが……。(写真1参照)

――AKIBAカルチャーズ劇場のnotallですね(2016年11月13日)。

 たさきょん(田崎礼奈)のグーを撮ってみました。まんなかに被写体を置いて超広角で撮ると、こういう画になるんです。

――田崎さんはこのライヴの時、最前で撮っていたヤスさんのカメラを手にとって、数秒間ですが撮影していましたね(写真2参照)。

 客席に向かってシャッターを押していました。しっかりとファンの皆さんの顔が写ってましたよ(笑)。

[次回2017年2/20(月)更新予定]