
都市部では少なくなってきたように感じる、女性とは子どもを産んで育てるもの、という価値観。けれども、地方ではいまも変わらず視線が痛いわけで―――。単身者の「いま」を取材した(全6回のうち4回目)。
【図を見る】女性だけじゃない!男性の生涯未婚率の割合も増えている
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独身は地方では生きづらい
大手メーカーで会社員として働く女性(50)が証言する。
「地方で独身は生きづらいと実感しています」
女性は東京での会社員生活を経て、昨年、企業合併に伴う転勤により、関西の地方都市に引っ越した。地方とはいえ、人口約150万人近い県庁所在地で、アクセスも良く便利だ。ゆえに東京に住んでいた時と、環境がさほど変わらないイメージを持っていた。
だが、転勤して間もなく、胸がざわつく場面に対峙することになる。
勤続30年で「珍獣扱い」
「えっ、勤続30年……? そんな人、他にいるの?」
発端は職場の面談だった。女性の勤続年数を知り、向かい合った50代の男性は、悪びれもせずこう驚いた。「女性でそんなに長く働いている人って他にもいるの?(結婚もせずに、同じ会社で長く働いている女性って、東京では他にもいるの?)という本音が透けて見え、“女性は結婚や出産を機に仕事を辞めるもの”という固定観念がにじんだ一言だと感じた。
「彼にとっては、女性が独身のまま、同じ会社で30年働いていることが衝撃だったんでしょうね。確かに30年前なら“寿退社”も一般的だったかもしれませんが、東京には結婚や出産を経ても、仕事を続けている女性は普通にいた。ここでは“珍獣扱い”されるレベルでいないんだと悟りました」(女性)
東京はまだ居心地がよかった
同じ職場で働く女性は、圧倒的に年下の派遣社員が多い。電話やコピーを取るのは基本的に女性だが、女性たちが特に違和感を持っているようにも見えない。女性は男性の仕事の補佐をする、という役割分担がいまだにはびこる現実を目の当たりにした。
「東京は独身でも居心地が良かったんですよね」(同)
東京で働いていた時は、周りには独身の同世代も多く、独身だからといって引け目を感じる場面はそこまでなかった。美術館に落語、歌舞伎――。年齢を重ねた独身女性が一人で楽しく遊べる場所がたくさんあった。