
木村:ジェンダー以外でのDE&Iの取り組みも拡充していますよね。
岩田:現在ローソンは、1万4500店舗、そこに勤めるスタッフはアルバイトを含めると19万人います。正社員の構成比で国際社員は全体の数%ほど。国籍ごとのつながりを重視することが分かってきましたので、同じ国籍の内定者と先輩社員がつながる機会を設け、アドバイスできるようにしています。国際社員の研修では海外のお客様に喜んでもらう商品開発やお店作りはどういうものか、アイデアを出してもらい、実際に営業へ引き継ぎ展開している例もあります。国際社員の育成、定着だけでなく、いろんな考えをもった人を集めながら、新しい発想を仕事につなげ成果としてあげていければ、仕事に対するやりがいにもつながると思っています。
競争力につなげる
江尻:航空事業には多様なスペシャリストがおり、その“匠の技”を引き継いでいく必要があります。昨年10月からは、シニアの活躍領域の拡大をしています。経験を生かしてこれまで以上に人材育成や技の伝承などを担っていただく、それとセットで人事・賃金制度を見直しました。若手の早期登用・シニアの活躍・専門性の高いスペシャリスト制度を同時に進めることで誰もが活躍できる環境を整えていくというのが狙いです。
山本:LGBTQ+への取り組みは、ここ数年で資生堂が特に力を入れてきていることです。プライドパレードの参加をはじめ、研修という形で、マーケッターやクリエイターが障がいのある社員やLGBTQ+の当事者と直接対話しています。商品開発や宣伝広告、マーケティングの施策のインスピレーションのヒントにもなりますが、社員全体のDE&Iに対するリテラシーが底上げされれば、最終的にはビジネスに影響すると考えています。
相馬:日本もここ5、6年でかなり変わってきていると思います。たとえば有価証券報告書には人的資本の開示が義務付けられましたし、女性活躍推進法による女性活躍の状況や男女間賃金差異などの情報の公表義務化もあり、それらの取り組みは進んだとは思います。ただ、我々がいろんな企業の方とお話をしていると、様々な施策をやっても競争力につながっている実感がない、人事に任せるだけで経営者の関心が薄いなど、ダイバーシティー推進の方が悩んでいる声も聞きます。この取り組みを、いかに競争力につなげるかが重要ですね。

渥美:フィンランドの場合、国土面積は日本と同じくらいですが、人口が500万人強。新しい産業を起こすためには、人・物・金が必要ですが、特に人を増やさないといけない事情があります。優秀な方にフィンランドに来ていただくためにはどうしたらいいか。やはり先進的な環境が用意されていることではないか。そうした環境だからこそ貢献したいという優秀な方に来てもらえるように、かなり気を配っていると思います。
(構成/編集部・大川恵実)
※AERA 2025年7月14日号より抜粋
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