聞き手を務めた楽天証券 トウシル&メディア編集部 部長の武田成央〈さだちか〉さん(撮影・佐藤創紀/朝日新聞出版写真映像部)
聞き手を務めた楽天証券 トウシル&メディア編集部 部長の武田成央〈さだちか〉さん(撮影・佐藤創紀/朝日新聞出版写真映像部)

(武田)山崎さんは生前、「善意の愉快犯」でありたいとおっしゃっていました。

 ちょっぴり毒のあるユーモアを交えてインチキなマーケティングのウソを暴いて、素人をだまそうとする悪い金融機関の商売の邪魔をする感じ(笑)。薫さんから見て山崎さんはどんな男性でしたか?

(山崎 薫)「独立独歩のしばき系」かな。経済ジャーナリストの東谷暁(ひがしたに・さとし)さんが山崎を評した言葉をアレンジしてみました。

 東谷さんが『エコノミストは信用できるか』(2003年、文春新書)という本を書いたんですね。エコノミストがどの時期にどう言説を転換したのかを検証した本です。

 そのとき私の担当番組に東谷さんをゲストとしてお迎えし、エコノミストを分類していったとき、山崎について「分類不能のしばき系です」と。

過剰だからおもしろい

(山崎 薫)あっ、もう一つ思いつきました。「too muchな男」ですね。すべてにおいて過剰なんです。

 買い物しすぎ、引っ越し多すぎ(19年間で6回)、勤めた先は12社って転職しすぎ、酒は飲みすぎ。山崎の論は正しすぎて時々窮屈だし。だからおもしろかったんですが。

 私は彼のユニークな視点と論の正しさが好きでした。食事とお酒の趣味も合っていました。

 山崎が深夜12時、1時という、彼にとっては「早い」時間に帰宅すると必ず、家で飲み直しです。

 私が寝ていればいいんですが、うっかり起きているところにほろ酔いで帰ってくると「あっ、ミスった」なんて思っていました(笑)。

 そこから飲み出すとお開きは3時、4時です。平日だと私は子どもたちのお弁当を作るために5時半には起きていましたから。

(武田)仲良しだったんですね。買い物もご一緒に?

(山崎 薫)はい、だいたい一緒に行っていました。でも身長158センチの私が重い荷物を持って息を切らして歩いているのに、山崎は3メートル先を歩いているなんてことはしょっちゅうでした。

「もうちょっとゆっくり歩いてよ」って言っても無視で、全然聞いてくれなくて。連れていた子どもが心配しちゃって、私と山崎の間をちょこちょこ行ったり来たりして(笑)。

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