
(山崎 薫)手数料目当てで商品を売る金融機関だけでなく、個人投資家にも厳しかったですね。「いちいち聞くな、ちょっと考えればわかるだろう」って。
(武田)山崎さんの物言いに文句をつける読者もいましたね。
(山崎 薫)アンチ山崎も当然いると思いますが、彼が論破されたのを見たことがありません。
(武田)僕もないです。
(山崎 薫)山崎は相手によって議論のスタイルを使い分けていました。数学ができて金融工学にも明るい文科系だったので、数式を操って普通に会話して、専門家を理詰めで論破できてしまう。
専門家ではない一般の方には文系のコミュニケーション力を発揮する。そのあたりは器用な人でした。
(武田)「ほったらかし投資」という言葉が定着したのは、山崎さんの功績も大きいと思います。
一緒にお酒を飲んでいるとき「当たり前に資産形成する時代が来る。でも、一定の割合でいる『考えられない人』に自分で考えろというのは難しいから、1つの商品に投資するだけでもいいと思って」とおっしゃっていました。
「ほったらかし投資」が諦めなのか山崎さん流のやさしさなのか、今もわからないですが。
(山崎 薫)諦めか、やさしさか。確かにわからないですね(笑)。
ただ、山崎は批判だけの人ではなかったことは確かです。
第一印象は?
(武田)山崎さんとはどんなご縁で?
(山崎 薫)結婚は2005年です。私は「日経CNBC」で経済ニュース番組を制作し、山崎に取材やゲスト出演の依頼をしていました。
山崎を知るきっかけは村上龍さん主宰のメールマガジン「JMM」(Japan Mail Media/現在休刊)です。
JMMでは金融や経済に関する村上さんの質問に若手金融マン5〜6人が答えていました。回答者の一人が山崎で、内容が光っていると思いました。
(山崎 薫)山崎は後年、「JMMの回答の執筆が自分を鍛えた」と振り返っていました。回答者の原稿には毎回、村上さんが目を通し、書き方も時々指導してくださったそうです。
芥川賞作家が赤ペンを入れてくれる仕事ってゴージャスですよね。
