自分を責め続けるうちに、やがて吃音になったと話す。桐貴さん提供。
自分を責め続けるうちに、やがて吃音になったと話す。桐貴さん提供。

―置屋のお母さんや先輩のお姉さんたちは助けてはくれないのでしょうか?

 最初は優しかったお母さんやお姉さんたちも、私が舞妓になるとがらりと変わりました。弱音を吐けば「根性がない」と叱られ、何をやっても怒られる毎日でした。次第に私自身が悪いんだと思い込むようになり、自分を責め続けるうちに、やがて吃音になりました。

――16年7月に舞妓を辞めました。理由は?

 決定的だったのは「お風呂入り」、つまり混浴です。お客さんと一緒に温泉地などに旅行に行って、タオル一枚巻いてお風呂に入りお客さんの体を洗わされるのです。話には聞いていましたが、冗談だと思っていました。

「お風呂に一緒に入ろう」

――「お風呂入り」は実質的な「性接待」だと思います。実際にあったのですか?

 ありました。舞妓にデビューして4カ月くらいたった頃です。お客さんから「旅行に行くよ」と誘われ、先輩のお姉さんたちと温泉に行きました。そこで、露天風呂付きの豪華なお部屋に通されると、お客さんが「お風呂に一緒に入ろう」と言ってきました。

 私はどうしても嫌でした。すると一緒に行ったお姉さんが優しい方で、酔ったふりをして騒ぎを起こしてくれたお陰で、なんとかその場は回避できました。けれど、その後も「お風呂入り」の話は続き、次も同じようにうまく逃げられるとは限りません。これ以上、舞妓を続けるのは無理だと悟りました。

――お風呂入りで性被害に遭った舞妓さんもいたのでしょうか。

 はい。混浴で性被害を受け、妊娠し、堕胎させられた舞妓もいます。その人は精神を壊して入退院を繰り返し、今もトラウマに苦しんでいます。

「何があってもお客さんに逆らってはいけない」と教育されてきたという。桐貴さん提供
「何があってもお客さんに逆らってはいけない」と教育されてきたという。桐貴さん提供
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