
――お座敷ではお酒も飲まされるのですか。
「仕込み」の時から飲まされました。顔見世での紹介の場で「ほら、お前も飲め」と言われました。本当に驚きましたが、ここでも断ることができないので、「おおきに、いただきます」と言って飲むしかありません。舞妓になってからも、毎晩浴びるほどのお酒を飲まされました。慣れないお酒でヘロヘロになり、ずっと吐いている子もいました。
――お客は未成年と知っていて飲ませていた?
もちろん知っていたはずです。お座敷遊びはお金がかかるので、お客さんは大企業の役員や裁判官、弁護士、大学教授、政治家など、権力を持った立場のある人たちばかりでした。自民党の現職議員もいました。
月に5万円
――休みや労働時間はどうでしたか?
舞妓には月2回の休みがありますが、お仕事が入れば休めず、代休も取れなくて1度も休みがない月もありました。労働時間は、どこからどこまでが勤務かわからない状態です。当時、門限が深夜12時だったので、だいたいその時間に置屋に戻ってきます。寝るのは早くて2時か3時。朝も早く、睡眠は長くて5時間程度です。忙しくて何も考える余裕がなく思考停止の状態になり、自分が何者であるのかも分からなくなってしまいました。
――給与は支払われていましたか。
お給料ではなく「お小遣い」として月に5万円もらっていました。だけど、そこからおしろいなどの日用品や生理用品など身の回りのものを買うと、手元にはほとんど残りません。
――外部に助けを求めたりできなかったのでしょうか。
中学を出たばかりの15、16歳なので、そういうことはわかりません。そもそも、お客さんとのトラブルを避けるという名目で携帯電話も持たせてもらえなかったので、外部との連絡も簡単には取れません。誰を信用していいかわかりませんでした。
