
雅子さまは90年に留学から帰国。お妃候補として雅子さまの周辺も騒がしくなったが、ご本人の様子がそう変わることはなかったという。
多田さんの印象に残っているのは、1992年の年末だ。いつものように、和やかな雰囲気でヘアカットを終えた。帰りがけに、雅子さまは多田さんに、何か言いたげな様子だった。
しかし、この日はクリスマスシーズンで美容院は大混雑。なんですか、と聞いたものの、雅子さまが切り出す気配がない。多田さんは、「じゃあ、またね」と、送り出した。
実は、この年の10月に陛下(当時の皇太子さま)が新浜鴨場でプロポーズ。
雅子さまがプロポーズを承諾したのは、12月12日。美容室で多田さんと雅子さまとのやり取りは、まさにこの直後のことだった。
年明け早々の93年1月6日、「皇太子さまと小和田雅子さんとの婚約内定」のニュースが報じられると、多田さんは、「あっ」と声をあげた。
そのあとすぐに、雅子さまがお店に多田さんを訪ね、個室で申し訳なさそうに切り出した。
「あのとき、多田さんに、(婚約について)言おうと思ったのですが…」
店内にお客さんが多くて、切り出せなかったのだろう。スクープをつかみ損ねました、と多田さんは苦笑する。
その後のスケジュールは、目まぐるしい。19日には皇室会議で結婚が正式決定され、その日のうちに、おふたりでの婚約会見が予定されていた。
「プロポーズに承諾のお返事をなさったあとでしたから、そのあとに控える婚約会見など諸々の行事の服装に合わせる髪型について相談を、とお考えだったのでしょう」