「当たり前」に疑問

――長年のスタイルをがらりと変えるのは難しいと聞きますが、年月とともに変化はありましたか。

 時間が経ってから、「やっぱりこれをやって」「あれをやって」と分担決めしてみたいなことって、なかなか難しいと思うんです。家事シェアについて我が家に変化があったとしたら、それは家族のスタイルというより私自身の考え方ですね。

「当たり前」に疑問を覚えて、「少しくらい手を抜いても、手伝ってもらってもいい」と考えるようになってから、気持ちがすごく楽になりました。

写真・図版(2枚目)| 渡辺満里奈が感じた“居心地の悪さ”の正体とは 「世の中は女性に家事の負担を強いている」
AERAが6月にオンラインで実施した「家事分担」についてのアンケートに寄せられた不満の声の数々
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――何かきっかけがあったのでしょうか。

 きっかけはコロナ禍です。誰もが身動きが取れなくなって、家族みんなが家にいて。そのときに「ん? ちょっと待てよ」と思ったんです。子どもが一日中家にいる夏休みだけでも大変なのに、一日3食を全員分、毎日私が? こなすの? 無理!みたいな。

 夫に料理を少し担ってもらおうともしましたが、大変な面もあって。ハンバーグを作ろうとなって、食材とか準備して、いざとなったら「そうそう!」「すごい!」とかって盛り上げないといけないと思っちゃって(笑)。これはこれで疲れるので、料理は私が作りましたが、洗い物はそれぞれ自分でやってもらうように言うなど、なんとか手を抜いてというふうになりました。

――ある意味、強制的にそういった状況に追い込まれたことで疑問や不満、イライラが表面化したんですね。

 きっとコロナ禍はあくまできっかけで、それ以前から心の底では疑問に感じてたんだと思います。この居心地の悪さは何だろうと思って考えてみたら、世の中がまだまだ女性に家事の負担を強いているんだと、社会の構造みたいなものを見せられた感じがして、ならば我が家からまず変えていかないと、と思ったんです。そのためには私が「当たり前」にやっていることを「当たり前ではない」と思うようにすること。この考え方はすごく大事だと実感しています。

(AERA編集部・秦 正理)

写真・図版(4枚目)| 渡辺満里奈が感じた“居心地の悪さ”の正体とは 「世の中は女性に家事の負担を強いている」
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