白血病を乗り越え、超難関の中学受験を突破した男児(提供写真/写真は一部加工しています)
白血病を乗り越え、超難関の中学受験を突破した男児(提供写真/写真は一部加工しています)
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 この春、超難関の中学受験を突破して、「男子御三家」と言われる中高一貫校に入学した男児(12)がいる。この男児は、受験を控えた小学5年生のときに、白血病だと診断された。壮絶な闘病を乗り越え、志望校に合格し、学校生活を送る彼に話を聞いた。

【写真】白血病を発症後も中学受験で難関校に合格した男児

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「英会話と理科実験の授業が特に楽しい」

そう言って目を輝かせる彼は、中学受験を経て、4月に都内の超難関男子校に入学した。ただ、いまも白血病の治療がつづいている。検査のため週2回は早退せざるを得ず、取材時も点滴を携帯しながら学校に通う。

 治療のため頭髪はない。登校初日、ウィッグをつけて学校に行ったが、あまりにも暑くて、2時間目に外してしまった。クラスメートたちはそれを笑うでもなく、自然なこととして受け入れてくれた。どうしても休みがちになるため、クラスの壁には彼のLINEのQRコードが貼られている。担任の先生からは、クラス全体に、

「学校のこと、なんでも連絡をしてあげて」

 とお知らせがあって、授業に遅れないよう、連絡が伝わらないことがないよう、友達からはしょっちゅうLINEメッセージが届く。

 白血病がわかったのは、一昨年の11月、小学5年の時だった。数日熱が下がらない体調不良が続いたため、検査をしに大学病院に行ったところ、病名を告げられた。何の前触れもなく、突然目の前が真っ暗になった。当時について作文に書いた彼は、こう振り返る。

「スケジュール帳に書かれた『塾の組分け試験』『修学旅行』『冬休み長野旅行』という文字が涙でにじんで遠ざかる。『これは夢なのか。本当にこんなことが起こっているのか』『なぜ急にこんなことになってしまったのだろう』『これから僕はどうなってしまうのだろう』。頭の中をぐるぐる回る思考たち。でも、その思考は一向にまとまりそうにない」

 入院生活は1年半に及んだ。薬の副作用で合併症や感染症にもなり、意識を失ったり、膵炎なって苦しんだり、高熱が続いて自分が自分でなくなるような経験を繰り返した。体じゅうに鉛筆ほどの太い注射や点滴を刺され、先の見えない治療が続いた。

 痛さや辛さに加え、社会からの断絶感や取り残され感で絶望的な気持ちになった。作文にはこうある。

「数日で退院していく他の子達への嫉妬、やり場のない怒り、失った日常への懐古、社会から断絶され取り残されていくことへの不安、全てが辛かった。ここは地獄だと思った」

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