
「仕事って、つらいものじゃなくて、暮らしを動かす工夫なのよ」。102歳・堀野智子さんが語る、働くこととの前向きな向き合い方。注射器の箱を作る内職、梨やリンゴ農家での力仕事など、育児と両立しながらいくつもの仕事をこなしてきた堀野さん。辛い状況下でも「働けばいい」「何か他にできることはないかしら?」と前を向くその姿勢には、しなやかな強さと生活力がにじんでいます。「働くことも生きること」と実感してきた彼女が語る、仕事をつらいものにしない考え方を、堀野さんの最新刊『102歳、今より元気に美しく』(朝日新聞出版)から一部を抜粋・加筆再編集して公開します。
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――堀野さんは今までたくさんのお仕事をしてきたと伺いました。そこから得た「働くこと」への向き合い方のヒントがあれば教えてください。
私は「働くこと=つらいこと」と思ったことが全然ありませんでした。
夫がお金を入れてくれないなら自分が働けばいいか、と思えたのも仕事に対するよくないイメージがなかったからだと思います。
とはいえ、小さな子どもが3人いる私にはどうしたって制約があります。
そこでまずは家の中でできる内職を始めました。
最初にやったのは、注射剤の保管に使われる密閉容器を入れるための箱作りです。密閉容器はガラスでできているので、箱の中で動くことのないようにきっちりとサイズを守って作らなければなりません。
もともとは隣の家の奥さんがやっていた内職で、「私もやりたい」と内職の発注元である薬屋さんを紹介してもらって始めました。
驚かれるかもしれませんが、まだ市販の糊があまり出回っていない時代だったので、ご飯粒を煮て糊作りから自分でしなければなりませんでした。
密閉容器が動かないよう、中に仕切りが必要なので、なかなかに複雑な造りです。紙をずらりと並べ、順番に糊付けをし、紙が糊の湿り気で少しやわらかくなったタイミングを見計らい、山折り谷折りを意識しながら、本体に仕切り紙を貼り付けて組み立てていきます。
内職なので、収入は「単価×個数-仕事を持ってきてくれた人への手間賃(運び賃)」となります。
たくさんこなせばこなすほど手取り金額が増えるので、夢中になってやりました。