沢田研二
沢田研二

「この25日で77ですよ!」

恒例のアンコール前MCも饒舌だった。

「めでたくもあり、だんだん終わりが近付いてくるというのも確かなことなんですけれど…」

 自嘲めいた言葉にもファンからは大喝采。ベトナム戦争などに反発するラブ&ピースの時代を体験したロッカーらしく、話題は近年の世界情勢にも及んだ。

「世の中、戦争でしょ?トランプさんとかイランに向かって降伏しろっていうのはどういうことなの?ネタニヤフってのはどういう人なの?核をもたないようにって、自分たちが持ってるのにさ」

 さらに、自身が過去に原爆をテーマにした映画『太陽を盗んだ男』(1979)で主演したことに触れるなど、年々きな臭くなる世相に不安は絶えない様子だった。

「やりたいことやって早く死んじゃったほうがいいんじゃないの?」

神戸国際会館(筆者撮影)
神戸国際会館(筆者撮影)

 ファンの笑いを誘いながら始まったアンコールだが、歌い始めると途端に会場の空気が変わる。メディアから姿を消し、タレント業からも遠ざかり、歌うことに特に全身全霊を込めた男ならではのオーラを感じた。特にラスト2曲、「渚のラブレター」(1981)、「いくつかの場面」(1975)は近年まれに見る名演だった。

「いつも何かが歌うことを支え 歌うことが何かを支えた」(「いくつかの場面」)

 沢田の人生をそのまま歌にしたようなこの名曲を聴きながら、まだしばらくは彼の活動を見続けて居られるよう祈る筆者だった。

 ライブツアー「霜柱と蝋梅の森」はこの後、11月1日までに全国で13公演開催予定。このところ発売即ソールドアウトになることが多い沢田のライブだが、パソコンやスマホにかじりついてでもチケットを取る価値はある。ぜひこの生ける伝説を多くの人にご覧いただきたいものだ。(中将タカノリ)

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