
「冷凍庫の肉」減ってくると不安
――今の東出さんはそのシステムから完全に抜けていると思いますか。
付かず離れずな感じがします。山で野生動物を見ていると、生き物って飯を食って排泄すればそれで生きながらえるんだということがわかるんです。だから、今の僕はお金には依存しなくなったけど、冷凍庫の肉が減ってくると「獲りにいかないと」と不安になります。
やっぱり住む場所はものすごく大きいですよ。東京って、家賃や水道ガス光熱費、食費にもお金がかかります。都会のシステムに組み込まれると、生きているだけでたくさんのお金を払わないといけなかったりします。今の暮らしはそれが圧倒的に少ない。「いっぱい働かないといけない」っていう強迫観念がないですよね。

――「こうあらねばいけない」という強迫観念から抜け出すのは難しくもあります。10代、20代の駆け出しのころは、特に周りに比較されたと思います。当時どう受け止めていたんですか。
「上にいかなきゃ」という上昇欲みたいなものはありましたよ。ネットニュースの見出しで「〇〇主演」とか見ると、「すげぇ役やってんな」「俺も頑張んないと」と思っていました。
――そうした競争からは、どのタイミングで解放されたのでしょうか。
いつだろう……。狩猟をするようになったのは大きいですね。はじめたときは、よく思わない人がいるからと、狩猟をしていることを公表してはいけないと言われていました。でも、狩猟文化って血なまぐさくて残酷ではあるけれど、それを隠す世の中って変だなって疑問も感じていて。