焚き火を囲みながらインタビューをしていると、近所に住む人が自然と加わっていく。軽妙なやり取りに東出さんがツッコミを入れ、そこからまた笑いが生まれていった/撮影・上田泰世(写真映像部)
焚き火を囲みながらインタビューをしていると、近所に住む人が自然と加わっていく。軽妙なやり取りに東出さんがツッコミを入れ、そこからまた笑いが生まれていった/撮影・上田泰世(写真映像部)

みんな「行き詰まっている」

――不安の種を探すことが、安心につながったりもするんでしょうか。

 それを一つひとつ克服していくことで、上昇しているというドーパミン的な快楽があるのかもしれないですね。

 競争をかき立てることは、推進力にもなります。ただ、いいものを買って、もっと良くなろうと不安材料を探して競争することは、エネルギーに転化できるようで際限がないことだとも思います。もう少しプリミティブなところに向き合う時間が増えると、意外と今のままでも生きていけるなって思えるような気がします。

 取材などで、いろんなメディアの方がここにいらっしゃるんです。同世代の方も多いのですが、みんな「行き詰まっている」と言うんです。

小屋の近くには「ひがしで農園」のプレートをつけた畑で野菜を育てる。じゃがいも、大根、パクチー、行者にんにくなどその数10種類以上/撮影・上田泰世(写真映像部)
小屋の近くには「ひがしで農園」のプレートをつけた畑で野菜を育てる。じゃがいも、大根、パクチー、行者にんにくなどその数10種類以上/撮影・上田泰世(写真映像部)

――どういう面でですか?

 定時に仕事に行って、デスクに座って、パソコンをたたいて、給料日になったらちょっといい飯を食って。時間がないときはざっと風呂に入って、布団で興味があるんだかないんだかわからないYouTubeを見て眠くなるのを待つ。「やりたいことじゃないな」「旅行とかパーッと行きたいな」「でも今は忙しいから行けないな」という状態が続いていることをそう呼んでいるのかもしれません。

 都市部の社会システムのなかで生きていると、雇用問題や株価の変動といった金銭面の不安が常につきまといます。そこでうまく順応できないと食べていくことができないから、そのルーティンから抜け出せなくなってしまう。

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