
これをきっかけに、エプスタイン氏の耳元に親しげに話しかけている若いトランプ氏のビデオがソーシャルメディアで出回ることになった。「やはり」とでもいうようにビデオや写真は何万回も再生されている。
抗議デモで事態が一変
一連のマスク氏の対応について、トランプ氏は自ら作ったソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」などで反撃し、「正気じゃなくなった」などと発信した。これらによりマスク氏が最高経営責任者(CEO)である米電気自動車(EV)大手のテスラの株は急落した。
2人の確執のきっかけは、トランプ政権が7月にも成立を目指す大型減税法案だ。これにマスク氏が強い反対を示したことで、修復し難い亀裂が生まれたかに思えた。
マスク氏が「私がいなければ選挙に敗れていた」「恩知らずだ」などとトランプ批判を連投すれば、トランプ氏も、マスク氏の企業への補助金や契約の打ち切りを示唆するなどした。6月6日時点では、2人の応酬は泥沼化の一方だった。
ところが同日に、カリフォルニア州ロサンゼルスで起きた連邦移民税関捜査局(ICE)に対する抗議デモが事態を一変させる。
デモ隊は警察当局と衝突し、一部の暴徒が車に放火したり、アップルストアで強奪をしたりするなど事態が悪化。トランプ氏は過剰に反応し、カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事の頭越しに州兵を派遣した。これに対し、マスク氏は支援しているような投稿を始めたのだ。バンス副大統領が「大統領は暴動と暴力を容認しない」とした投稿については、マスク氏は星条旗の絵文字を付けた。そもそもマスク氏は国境封鎖や不法移民の強制退去については、トランプ氏に同調してきた。
テスラ株は乱高下しているが、マーケットは2人の緊張関係の緩和を歓迎しているように映る。
(ジャーナリスト・津山恵子=ニューヨーク)
※AERA 2025年6月23日号より抜粋
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