
先週に多く読まれた記事の「見逃し配信」です。ぜひ御覧ください(この記事は「AERA DIGITAL」で2025年6月9日に配信した内容の再配信です。肩書や情報などは当時のまま)。
【写真】「(横浜)流星には負けない、というモチベーションが生まれた」と吉沢亮さん
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ある歌舞伎役者の半生を描いた吉田修一さんの長編小説『国宝』が、李相日監督によって映画化された。主演を務めた吉沢亮さんは、稀代の女形・立花喜久雄とどのように向き合ったのか。AERA 2025年6月9日号より。
──任侠の一門に生まれた立花喜久雄は、抗争により父親を亡くし、10代半ばで上方歌舞伎の看板役者・花井半二郎のもとに引き取られる。半二郎には一人息子の俊介(横浜流星)がいた。二人は互いを意識しながら歌舞伎役者としての道を歩み始める──。
吉沢さんによって喜久雄が立体的に立ち上がっていく。その喜びを吉田さんは稽古の段階から感じていたという。
吉田修一(以下、吉田):歌舞伎の稽古をされている段階で一度、また撮影中も何度か現場に足を運び、見学させてもらいました。稽古で練習用の着物の帯を3、4人の方に囲まれ締められる様子を見ていたのですが、その時の表情が「もう喜久雄そのものだ」と感じたんです。
吉沢亮(以下、吉沢):そんなところをご覧になっていたんですね。
吉田:作品にも書きましたが、いい意味で“からっぽ”。その感じがもうあるんだ、と。撮影に入ると吉沢さんに会うというより「喜久雄に会いに行く」という感覚でした。
喜久雄は「スター」
吉沢:僕は稽古に入る前、一緒に食事に行かせていただいた際に「喜久雄はスターだと思っているんです。僕にとってのスターは笑顔が素敵な人なんです」と仰っていたことが印象に残っています。
吉田:確かに言いましたね。
吉沢:「喜久雄には、つらい時こそ笑っていてほしいんです」と。その言葉がすごく印象的だったので、絶対にどこかで笑ってみよう、と思っていました。ただ、撮影中は目の前のことに一生懸命になるあまり、忘れてしまって。「どこで笑おうか」とまで細かくは考えられていなかったのですが、完成した作品を観たら泣きながら笑っているような場面は確かにあって。