藤田弁護士は、こう話す。

「宅建業法は、不動産を『買う』一般消費者を保護するための法律で、不動産業者が個人から買い取る場合は、クーリング・オフや説明義務の規制などが原則として適用されません。また、特定商取引法も売買の対象が不動産ではなく物品に限られていますから、消費者庁も動けません。まさに法の隙間をついた手法なのです」
 

 不動産を周辺価格より安く買い叩くことで問題となっている「押し買い」は、不動産業者にとって「うまみ」が大きいのだという。

 被害者救済に取り組んでいる「ひかり総合法律事務所」(東京都)の葛山弘輝弁護士によると、宅建業法では、顧客の不動産売買を仲介して得られる手数料の上限は、取引価格の3%と定められている。3000万円の物件を取引すれば、手数料は90万円となる。

 しかし、3000万円の物件を1000万円で買うことができれば、ざっと差額の2000万円が利益になる。そのため、判断能力が落ちていたり、すぐに相談する家族がいなかったりするひとり暮らしの高齢者をターゲットに、不当な利益をねらう業者がいると見られている。
 

居座れば「不退去罪」に

 では、被害にあわないようにするには、どうすればいいのか。

 高齢者の消費者問題に詳しい「ひかり総合法律事務所」の髙木篤夫弁護士は、「不動産業者を自宅の中に入れないこと」「その場で契約書に署名押印しないこと」が重要だと指摘する。

「玄関先でも『帰ってください』と言っても帰らなかったら、警察を呼んでください。拒絶の意思を示しても帰らなかったら、それは刑法上の不退去罪に該当することもあります。
 それでも自宅に上げてしまって契約の説明を受け、強引に勧誘されて契約書へのサインを求められても、絶対にその場で署名押印しないこと。『子どもたちに相談してから』などと言って、一度帰ってくださいと言って退去を求めてください。帰らなければ警察を呼んでもかまいません」
 

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