AERA 2025年6月9日号より

 大の里が日体大1年で学生横綱になったとき、「中退して入門した方がいい」という声もあちこちで聞かれた。正直にいえば、筆者自身、そういう考えが頭をかすめてもいた。しかし、大の里のスピード出世は、大学での4年間があったからこそ成し遂げられたともいえる。

大学で成長した大の里

 大の里は高校時代、素質の高さを認められながら、大きなタイトルとは無縁だった。日体大の齋藤一雄監督は、右差しにこだわっていた大の里の欠点を見抜き、左からの攻めを教えた。それが、大学でアマ横綱2回、学生横綱1回と大きく成長するきっかけになった。

 入門した二所ノ関部屋の師匠は、「中卒たたき上げ」の元横綱稀勢の里。苦労して横綱になった自らの経験をもとに厳しく指導したことも、スピード出世の要因となった。それは、大卒力士と中卒たたき上げ力士との垣根がなくなったことの象徴ともいえる。

 大の里の横綱昇進で呪縛から解き放たれた大卒力士が、次々と横綱に昇進し、大相撲を大いに盛り上げる──そんな未来が訪れるかもしれない。(相撲ライター・十枝慶二)

AERA 2025年6月9日号

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