斎藤慎太郎八段(左)と伊藤匠叡王=2025年4月2日、名古屋市
斎藤慎太郎八段(左)と伊藤匠叡王=2025年4月2日、名古屋市
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 注目対局や将棋界の動向について紹介する「今週の一局 ニュースな将棋」。専門的な視点から解説します。AERA2025年6月9日号より。

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 5月26日、千葉県浦安市において、第10期叡王戦五番勝負第4局、伊藤匠叡王(22)ー斎藤慎太郎八段(32)戦がおこなわれた。きわどい終盤が長く続いた大熱戦の末、最後は125手で斎藤挑戦者が勝利。スコアは双方ともに2勝ずつとなり、シリーズは最終第5局へともつれこんだ。

斎藤「辛抱が実ったところはあるのかな、というふうに思います」

伊藤「中盤の構想力というか、そういうところを磨いていかないといけないかなと感じました」

 激闘を経てフルセットで迎えるタイトル戦の最終局は、観戦するファンにとっても、やはり感慨深いものだ。一方で最近は、最終局を見る機会が減ったと感じられている方も多いのではないか。その理由は実にシンプルで、近年は藤井聡太七冠(22)が、ほとんどの番勝負を圧倒的な成績で制覇してきた。

 昨年の叡王戦は久々に最終局を迎えたシリーズだった。そして八冠を持つ藤井叡王を伊藤挑戦者が降している。藤井がタイトル戦で敗退したのは現在に至るまで、まだこの一度きりだ。

 この一年の間、藤井に次ぐ序列第2位は伊藤だった。伊藤がそのポジションを守れるのか。それとも斎藤が取って代わるのか。運命の最終戦は6月14日、千葉県柏市でおこなわれる。

 詰将棋を解くのも作るのも得意な斎藤は「天神祭」と題する長編の問題を「詰将棋パラダイス」誌5月号に発表している。斎藤ファンならずとも、ぜひともご覧いただきたい名作だ。

 伊藤は毎月、同誌の解答に精力的に取り組んでいる。その姿勢は藤井七冠や永瀬拓矢九段(32)も変わらない。AI研究全盛の時代になっても、トップクラスの実力を支えているのは、詰将棋解答といった地道な鍛錬なのだろう。(ライター・松本博文)

AERA 2025年6月9日号

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