新たな演出で再生産という価値

 かつて一世を風靡した番組は、再放送や配信だけでなく、新たな演出で再生産することにより、再び輝きを放つことがある。近年では、漫画・アニメやおもちゃの世界などでもリバイバルブームが起こっていて、過去の人気作がリニューアルされるケースがどんどん増えてきている。テレビ業界も例外ではなく、局のアーカイブを活用する再活用戦略は、番組制作の現場で大きな潮流となっている。

 昔のテレビ番組はその場限りの「なまもの」という認識だったが、今ではアーカイブとしてあとに残るものだという考え方も一般的になっている。すでに存在する手持ちの資産をどう活用していくのかというのが、テレビ局にとって重要な課題となっているのだ。

 今回の日本テレビの「大進化!レジェンド番組祭り」では、往年の人気番組を現代風にアレンジする工夫が随所に施されていた。番組ごとに「懐かしのメンバー」と「令和の新メンバー」を掛け合わせる構成は、まさに「過去と現在の橋渡し」を意識したものだ。

 たとえば『マジカル頭脳パワー!!』では、MCに山里亮太と永井美奈子アナウンサーを迎え、所ジョージや間寛平といったおなじみの面々が再登場する一方、なにわ男子の大橋和也など若手も参戦。『THE夜もヒッパレ』でも、三宅裕司や赤坂泰彦に加えて、King & Princeの永瀬廉が新たに加わり、世代間をつなぐ仕掛けがあった。演出面でも過去にやっていたことをそのまま行うだけではなく、今の時代に合わせた形に巧妙にパッケージし直している部分が多く見られた。

残された課題は?

 もちろん、課題は残されている。ただの懐古趣味に過ぎないと考えて敬遠する視聴者もいるだろう。それに、今回の特番はあくまで一過性のイベントにとどまる可能性もある。一時的にSNSなどで話題になったとしても、レギュラー放送や次の新企画への橋渡しができなければ、将来につながる試みだったとは言えなくなってしまう。

 しかし、長年、娯楽の王様として時代を牽引してきたテレビ局にとって、過去のレジェンド番組というのは価値のある資産であり、それを積極的に活用するというのは、新たなビジネスチャンスとなりうるものだ。挑戦する価値は十分にある。

 日本テレビは自局の魅力的な過去番組を素材にして、新たな視聴者層を開拓し、配信、イベント、グッズ展開などにつなげることも視野に入れているかもしれない。レジェンド番組の復活というプロジェクトにおいて、テレビ局の目線は過去ではなく未来に向けられているのだろう。(お笑い評論家・ラリー遠田)

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