キーエンスの本社(写真:YUTAKA/アフロ)
この記事の写真をすべて見る

 平均年収ランキングで上位の常連のキーエンス。検査・計測機器メーカーがなぜ、平均2千万円を超す年収を達成できるのか。

【驚きのグラフ】うらやましい!2千万円超えが続くキーエンスの平均年収の推移

*  *  *

 大阪市東淀川区に本社があるキーエンス。自動車や半導体、通信機器など工業製品の生産ラインで、精度や品質をチェックする機器を作る会社だ。一般の消費者にはあまりなじみはないが、高い製品開発力と、独特の社風を持った会社として知られる。

 キーエンスの有価証券報告書によると、2024年3月20日時点での社員は3042人(単体)で年間給与の平均は2067万円。東京商工リサーチの平均年収ランキングでは3位にランクインした。22年は2182万円、23年は2279万円と、2千万円超えは3年連続となる。24年の社員の平均年齢は35.2歳と若い。

 この高年収の源泉はどこにあるのか。それは群を抜いた事業の高収益性にある。

 25年3月期の営業利益率(連結ベース)は驚異の51.9%。上場企業の平均(金融を除く)が7%ほどなので、それをはるかに上回る数値だ。営業利益の一定割合を社員に還元するという考え方をとっており、賞与は年4回支給される。もうけが出るほど、給料が上がるので、社員の働く意欲も高そうだ。

 では、高い営業利益率の秘密は何か。いくつかあるが、一つは自社工場を持たずに協力会社と開発・生産体制を組んでいることだ。建物や生産設備を持っていると何かと費用がかかるが、持たずにいることで、キーエンス側は企画と開発に専念できる。

 そしてキーエンスの象徴とされるのが「ダイレクトセールス」と呼ぶ営業展開だ。代理店を使わず、自社の営業社員が各メーカーに出向き、「お困りごとはありませんか」などと話しかける。そして各工場ごとに抱える問題点を聞きだし、一緒に考えて課題を抽出し、それにあった製品を提供する仕組みが、取引先から高い評価を受けている。

 新商品の7割が世界初か業界初とアピールする。経営理念は「最小の資本と人で、最大の付加価値をあげる」だ。

 キーエンスは、1974年に兵庫県尼崎市で開業した「リード電機」が前身だ。その後、「Key of Science」に由来するいまの社名になったのは1986年で、翌87年に旧大阪証券取引所2部に上場している。

次のページ 「接待禁止」「上座・下座を意識しない」