
ここ最近は、急成長を遂げている。10年前の15年3月期の売上高は3340億円だったが、今年4月25日発表の25年3月期の売上高は1兆591億円と初めて1兆円を超えた。
社風も独特で、例えば取引先との「接待禁止」を打ち出している。採用ページには「正直かつ公正な取引を実現するために、接待は禁止。あくまでも、ビジネス上で提供できる付加価値をお客様に認めていただけるかが大切です」とある。
社内では「オープン&フラット」を掲げる。「誰にでも丁寧語」「上座・下座を意識しない」という。キーエンスの業務を語るキーワードは「合理的」だ。社員が共有する価値観の一つ目も「常に合理的に判断する」。その価値観は細部にまで浸透している。たとえば、会議室の座席。役職に関係なく、会議室に入ってきた人が奥から詰めていけば最もスムーズなので席は決めていない、といった具合だ。
社員の働きぶりも周りを驚かせる。朝一で取引先に出向き、効率よく回ることが徹底されている。
一方で平均勤続年数は11.5年と短い。いわゆる「燃え尽き症候群」も少なくないと言われるが、高収益と高賃金を実現するには一定の緊張感と厳しさも必要なのかもしれない。
(経済ジャーナリスト 加藤裕則)
