
日本を代表する企業や組織のトップで活躍する人たちが歩んできた道のり、ビジネスパーソンとしての「源流」を探ります。AERA2025年6月2日号では、前号に引き続き西山製麺・西山隆司社長が登場し、「源流」である山梨県甲府市などを訪れた。
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大学を出て2年目の1982年春から約1年、富士山の北北西にある甲府市で、すかいらーく住吉店で「ホール」と呼んだ客席を担当した。1年目の東京都府中市の東府中店では厨房で調理をする日々だったが、今度は客と直に接し、言葉を交わす。
甲府市は山梨県の県庁所在地だが、当時の人口は府中市と同程度の20万人余り。ファミレスが増える前で、家族や友人と気軽にいく店があまりなく、次々に初めての客がきた。それらの客が気に入ってまたきて、友人や知人に紹介もしてくれて、支持層が広がっていく。
最初に何かをきっかけにきてみた客は「ビジター」、気に入ってまたきてくれる客は「リピーター」、友人に「行ってみなよ」と輪を広げてくれる客は「サポーター」。後になってそう仕分けしたが、3段階とも「すべては客の満足」を基に、生まれた。
父・孝之氏が札幌市で創業した西山製麺の客は、麺の供給先のラーメン店主。その向こうに、店へ食べにきてくれる人々がいる。店主らは店を始め、増やすとき、味を工夫してそれに合う麺を求める。太さや幅、硬さ、色や縮れ具合など、いま国内の3千店、海外の350店へ出している麺は300種を超える。
東京・駿河台の中央大学商学部の経営学科で学んだマーケティングに、甲府市で得た「すべては客の満足」の信念が重なった結果だ。
「ビジター」の感想「リピーター」の不満「サポーター」の提案
企業などのトップには、それぞれの歩んだ道がある。振り返れば、その歩みの始まりが、どこかにある。忘れたことはない故郷、一つになって暮らした家族、様々なことを学んだ学校、仕事とは何かを教えてくれた最初の上司、初めて訪れた外国。それらを、ここでは『源流』と呼ぶ。
2月下旬、すかいらーく住吉店があった甲府市を、連載の企画で一緒に訪ねた。西山隆司さんがビジネスパーソンとしての『源流』となった「すべては客の満足」にあるとの姿勢を、体得した地だ。