トランプ大統領の長すぎるネクタイの意図
そもそも、トランプ大統領のスーツの着こなしは以前からたびたび批判されてきた。お決まりの紺スーツに白シャツ、赤いロングネクタイという“パワードレッシング”を意識したスタイルだが、特にネクタイが長すぎるという指摘が多い。
「トランプ大統領は、青系スーツ、白シャツ、赤か青のネクタイ、黒靴を日常的に着用しています。文字にすると典型的な市井のビジネススタイルを想像してしまいますが、実際の装いはまるで正反対。彼のスーツは青系でもメンズファッションの基本色、濃紺ではなく、光沢があり、色調はロイヤルブルーともいえる明るい青。赤いネクタイも基本のブルーベースの赤ではなく、ステージ上の演者や選挙立候補者ぐらいしか身につけないイエローベースの赤です。これらのチョイスをトランプ大統領が確信犯的に行っているところは注目すべきです。なお、『ネクタイは長すぎる』という指摘がありますが、彼の体躯だと常識的なネクタイの長さでは不格好に見えてしまうので、あえて長くしてバランスを取っているのでしょう」
実はイタリアの高級ブランド「ブリオーニ」を愛用するなど、スーツには一家言ありそうなトランプ大統領。フランシスコ前教皇の葬儀で指摘されたドレスコード違反も、高度に政治的な判断が働いたのではないかと推測される。
そんなトランプ大統領の服装が批判される背景には、数カ月前のゼレンスキー大統領の“スーツ問題”がある。ウクライナのゼレンスキー大統領がホワイトハウスでの会談に黒い長袖シャツの服装で臨んだ際、親トランプ派の記者から「スーツは持っていないのか?」と揶揄されたのは記憶に新しい。
ゼレンスキー大統領は戦争勃発以来、一貫してカーキ色の軍装スタイルを通している。外交の場ではスーツが望ましいという声も根強いなか、前教皇の葬儀でもスーツではなく黒い襟付きの上着の服装にとどまった。
「ゼレンスキー大統領が無粋を承知で軍服を着て乗り込んできたのは、意外に感じた方もいるかもしれませんが、母国民の感情に寄り添い、ロシアによる侵略行為を全世界に軍服で訴えたからだと考えます。日本でも激甚災害が起こり、首相が現地へ向かうときは、スーツではなく防災服を着ます。現地で行う仕事はスーツであろうが防災服であろうが違いはありませんが、国民へ与える印象は天と地ほどの差があります。繰り返しになりますが、服は常に重要なサインとして機能します」