日本の政治家でスーツの着こなし方が見事なのは?

写真:AP/アフロ

 トランプ大統領もいつもTPOをわきまえていないわけではない。

「彼が単なるごうつくばりではない証拠に、2019年に天皇陛下に対面する際、いつもの光沢ブルーではなく、濃紺のスーツを着用して彼なりの敬意を表していました。トランプ大統領は生来、繊細で相手を思い遣ることができる人物だと感じます。しかし、政治やビジネスの場ではもっとも影響力のある存在であらねばならない。それゆえに今のスタイルを構築しました」

 何かと話題を呼ぶ、同氏の服装。それでは日本で「政治家として完璧なスーツの着こなしをしている人物」は誰なのか?

「もっともスーツをよりよく着こなしている人物は、自民党の麻生太郎最高顧問です。オーダースーツを着ている政治家はたくさんいますが、彼ほどフィットしたスーツを着ている人はほかに見当たりません。特に首から肩先にかけてのなだらかなラインが美しい。服飾業界では肩のラインを重視します。肩の収まりが悪いと『肩がボコボコ』などと表現しますが、対極的に麻生氏の着こなしは見事です。彼が、あと10センチ背が高ければ、間違いなく世界のベストドレッサーとしても歴史に名を残したでしょう」

 同じ日本の政界では石破茂首相の服装が「ヨレヨレ」「だらしない」などとSNS上で批判されることが多いが、スーツの着こなしは好みの問題ではなく、「品格」にもつながる。こうした背景を踏まえると、政治家に求められるスーツのあり方とはどのようなものなのだろうか。

写真:つのだよしお/アフロ

「常にスーツ姿で人前やメディアに政治家が露出することを踏まえると、次の点が必須です。①スーツが体に合っていること②色や形が常識的であること(色は濃紺や濃灰)③シャツやネクタイや靴が適時であること④全体として、お洒落に見えるというより、目立たないお洒落をよしとすること――。最近気になるのは、スーツにボタンダウンシャツを合わせる人が多いことです。ボタンダウンシャツはジャケット&パンツに合わせるスポーティーなシャツであって、政治の場には軽すぎます」

 これからニュースを見るときは、政治家のスーツの着こなし方も気にするのもいいかもしれない。その人物の印象も大きく変わるだろう。

(編集部・古寺雄大)

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