
2軍の打撃指導が機能していない可能性
駒田3軍監督が横浜のコーチだった時代に指導を受けた選手はこう語る。
「駒田さんには『どういう打者になりたいのか』を聞かれました。目指す打撃スタイルから逆算して、この部分が足りないから修正してみようとわかりやすく指導してくれる。試合で凡打に倒れても、取り組んでいる打撃ができていたら『OK!その形を続けよう。空振りしてもいいんだよ』と声をかけてくれて、精神的に楽になりました。浅野はフォームを修正したことで間合いが取れるようになり、打球の力強さを取り戻しましたよね。指導者との出会いは大きいんです。1つのアドバイスで選手はガラッと変わりますから」
浅野と同様、巨人の将来を担う強打者として期待された秋広優人もファームでも精彩を欠き、5月12日にソフトバンクに電撃トレードで移籍した。巨人を長年取材するスポーツ紙記者は気になる点があるという。
「ファームの打撃成績を見ると、総得点や打率はともにリーグ2位と高い数値なのですが、個々の選手を見るともっと振ってほしいなと感じます。矢野謙次2軍打撃チーフコーチ、橋本到2軍打撃コーチが指導に当たっていますが、結果や打席内容を見ると浅野や秋広の良さを引き出したとは言えない。もちろん2人のコーチだけの責任ではないですけど、浅野の場合は駒田3軍監督の指導を受けなければ今も悩んでいたかもしれません。育成は強いチームを作る上で重要な要素です。2軍の打撃指導が機能していないとすれば、改善の必要があるでしょう」
かつて、名打撃コーチとして知られたのが内田順三氏だ。広島、巨人で計37年間コーチを務め、金本知憲(元阪神監督)、新井貴浩(現広島監督)、高橋由伸(元巨人監督)、阿部慎之助(現巨人監督)、坂本勇人(巨人)、鈴木誠也(カブス)、岡本和真(巨人)ら球界を代表する強打者の指導に心血を注いだことで知られる。他球団の編成担当はこう振り返る。
「内田さんが移籍した球団は打線が強くなる。指導者ですが、強打者の補強に匹敵するプラスアルファをチームにもたらしていました。豊富な打撃理論で、悪癖を直す練習方法をたくさん持っている。選手が納得して取り組んでいるので、上達が早いんです。理想のコーチだと思います」
巨人は坂本が打撃不振で2度目のファーム降格となり、長期離脱することになった岡本もポスティングシステムでメジャー挑戦の可能性が報じられている。若手の台頭が求められているが、巨人には浅野だけでなく、増田陸、萩尾匡也、ソフトバンクからトレード加入したリチャードら、強打者候補の選手たちがいる。個々の選手の頑張りはもちろんだが、彼らを一本立ちさせるため、現場の指導者の手腕も問われている。
(今川秀悟)
こちらの記事もおすすめ 故障で離脱中の村上宗隆と岡本和真のメジャー挑戦に黄信号、今年は残留の可能性 「後継者がいない」切実な事情も