
与党が少数に陥った衆院で、立憲民主党が選択的夫婦別姓の導入を目指し、4月30日に法案提出に踏み切った。働く女性の声に動かされ、経団連が導入賛成の立場を表明するなど、実現への機運が高まっているかに見えたが、与党のみならず、野党内にも共同歩調に消極的な動きが見え隠れする。どうなる、選択的夫婦別姓。元フジテレビアナウンサーで、現在は弁護士として活躍する菊間千乃さんに話を聞いた。
【写真】【どうなる選択的夫婦別姓】交際中は対等だったのに結婚すると男性が上?!
”好きな人の名字になれる”ことにときめいた時期も
もともと姓にこだわる気持ちはありませんでした。子どもの頃は好きな芸能人の名前の下に「千乃」と自分の名前を添えてみたり、“好きな人の名字になれる”ことにときめいたりしていましたから(笑)。
意識が変わったのは、結婚後です。銀行口座、保険証、運転免許証、マイナンバーカードなど、結婚や離婚のたびに全てに変更が必要で、なぜ女性ばかりがこんなに不便なことを負わされているのだろうか、と。ひとつひとつの手続きの負担は女性本人だけでなく、各窓口で受け付ける側にも相当かかっています。結婚しても旧姓が使えるようになれば、社会全体での無駄な作業が減り、業務効率も大きく改善されると思います。

交際中は女性のほうが優位なのに
交際中は女性のほうが優位な立場にあるカップルが多いような気がしていて、それって関係性が対等だからではないかと思います。それなのに、結婚すると家庭内で男性が優位に立ち、女性ばかりが家事・育児を負担するようになる。これは女性が働いている、働いていないに関係なく起きていることだと思います。
民法750条には「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。」とあって、一見平等のようですが、94.5%の夫婦が夫の姓を選択しているという現状があります。付き合っているときは対等なのに、結婚すると、「主人」という言葉が表すように、家を守り、次世代につないでいくのは男性で、女性はそれを支える存在という主従関係が生まれてしまっている。これが問題だと思います。

働いていると”不便な出来事”が週1回起きる
いま働く女性が増え、その声によって経団連が「強制的夫婦同姓」に反対しているのは、とても心強いことです。やはり働くうえで不便さを感じる機会はとても多いですから。
私は2010年に司法試験に合格した時は結婚前だったので「菊間千乃」の名前で合格証書が発行されました。しかし、結婚後に旧姓で活動するためには日弁連に申請が必要です。さらに、私は社外取締役に就いていますが、旧姓で活動していても会社の登記は戸籍名です。株主総会の招集通知などで本名がさらけ出されています。