22年1月9日、神真都Qはネットを飛び出し、「討ち入り」と称した全国一斉街頭デモをスタート。ちょうど、厚生労働省の専門家による分科会が、5~11歳へのワクチン接種を了承した時期と重なるが、デモでも柱となる主張は「ワクチンを子どもに打たせるな」というものだった。
デモだけではワクチン接種を止められないと考えた団体は、行動を過激化させていく。その一つが「凸(とつ)」。接種会場に押しかけ、抗議して接種の中止を訴えるもので、22年2月ごろに始まった。
団体における一兵衛氏の存在感は非常に大きく、2月中旬の時点で取材依頼を送っていたが、返信はなかった。また、ジョウスター氏も、これまでに取材に応じていない。
■警察が本腰を入れる
神真都Qの「凸」はやまなかった。3月15日に東京ドーム、同29日に新宿区の区立施設、4月7日には渋谷区のこどもクリニックに相次いで無断で侵入。まず渋谷の事件で4人が現行犯逮捕され、その後、さらに一兵衛氏ら4人が逮捕された。警視庁公安部による3件分の逮捕は4~7月、実に5回に分けて、計13人に上った。
団体がコミュニケーションツールとしていたのは、LINE(ライン)で誰でも入ることができる「オープンチャット」という機能だ。最盛期とみられる3月末に私が確認したところ、全都道府県に72のオープンチャットがあり、参加者は1万3千人を超えていた。
警視庁が4月に逮捕に踏み切り、その後も続々と摘発に動いたのは、団体が今後、何をするかわからないという警戒心があったとみられる。
動いたのは警視庁だけではない。大阪府警は11月、一兵衛氏と並んでリーダー格だった村井大介容疑者(53)を逮捕した。だが、その容疑は建造物侵入ではなく、詐欺。2~7月ごろに神真都Qには1千回超、計約7200万円もの「寄付金」が寄せられ、その一部を事実上の収入にして複数の電化製品を購入するなどしていたにもかかわらず、4~7月にかけて、生活保護費計51万円をだまし取った疑いだった。大阪地検も詐欺罪で起訴した。半年で巨額の寄付が寄せられているという事実は、陰謀論が見方によってはビジネスになるということを示している。