「金の国際指標となるニューヨーク先物では、4月22日に1トロイオンスあたり3500ドルを超える場面がありました。25年初めの時点では2600ドル台だったのが、急スピードで上昇しています。この間のドル建て金価格の上昇率は約28%。昨年1年間では27.5%の上昇率でした。これは10年以来、14年ぶりの高い上昇率でしたが、今年はたった4カ月でそれを上回るペースになっています」(同)
ここまで金の価格が上昇することは、これまでにもあったのだろうか。
「1979年から80年にかけて、似たような“急騰相場”がありました。東西冷戦の真っただ中で、アメリカとソビエト連邦という二つの超大国が対立していた時代です」
1970年代にはオイルショックが起き、原油価格が大きく高騰した。その影響で、アメリカ国内ではインフレ率が10%を超えるなど、経済的にも大きな混乱が続いていた。
通貨としての金
「そうした中で、両国の緊張が高まり世界は核戦争まで懸念しました。もともと1トロイオンス240ドルほどだった金の価格は850ドルまで跳ね上がり、3倍以上に急騰しました。現在の状況と比較しても、当時の急騰ぶりは非常に激しかったと言えるでしょう」
核戦争前夜に、金歯や片方だけのイヤリングが高く売れて喜んでいる場合ではないが、ただ、こうした混乱の中で、改めて金の価値が見直されているのは事実だ。亀井氏は続ける。
「トランプ政権の政策により、すでにアメリカの国債が売られ始め、『ドルは本当に安全なのか?』という不安が世界中に広がっています。ただし、歴史を振り返れば、ドルの価値を裏付けていたのはもともと金でした。71年のニクソン・ショックまでは、ドルと金は交換可能であり、金は通貨としての役割を担っていたのです。つまり、かつての通貨としての金という性質が、いま再び注目され、価格が上昇しているのです」