西成の人々に迫ったノンフィクション書籍『西成DEEPインサイド』(朝日新聞出版)
腰だけでなく全身が痛くなり、頭がもうろうとしてきた。きつすぎる仕事のわりに、弁当はご飯と昆布のつくだ煮、ソーセージ一切れだけ。
一緒の現場に入った男性に話を聞くと、以前に別の現場に住み込みで入ったとき、前借り分のほか、食費やふとん代などを次々に抜かれ、賃金は受け取れなかったという。
「働いても働いてもお金がたまらないのは、こうやって巻き上げるからなのか」
後日の取材でわかったことだが、自分たちを雇った業者は、親会社との取り決めとは違う条件で働かせていた。本来は拾い集めた量による出来高払いだが、定額の安い支払いで済ませていた。
夕方に作業が終わり、バスでカマに戻った。全身がズキズキ痛むが、新世界へ。酒を酌み交わしながらどんなルポに仕上げるかを練った。
一休みして帰ろう。先輩と記者クラブのソファに横になり、気づけば朝。南国系の鳥の大きな鳴き声で目覚めた。
※【後編】<西成の暴力手配師に「この野郎!」と追いかけられ……潜入取材したジャーナリストが指摘する「悪」の変化>に続く
[AERA最新号はこちら]