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 日本がセックスレス大国といわれてしばらく経つ。取材を進めると、さまざまな「性生活」離れの実態が見えてきた。セックスレスは課題なのか、現代社会の必然なのか。

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妻のことは大好きなのに…

「妻のことは大好きだけど、いざという時にできないことが続いて……」

 こう打ち明けるのは、4年前に結婚した37歳の男性だ。子どもを望み、2年ほど前から妊活を始めたが、スタートして間もなく、「性交渉が最後までうまくいかない」という壁に突き当たった。

 5年近い交際期間の最初のうちは、そんな悩みを抱くことはなかったが、交際を始めて3年ほど経った頃から性交渉の頻度が明らかに減ってきた。「関係性が深まって落ち着くにつれて、頻度が減るのは自然なこと」と、互いに特に不満を持つこともなく結婚。それからも仲睦まじく暮らしていた。だが、いざ「子どもがほしい」となって“妊活”として取り組むと、高いハードルを感じることになった。

いざ「この日」のプレッシャー

 まず取り組んだのが、妊娠の可能性が高い排卵日近辺に性交渉の機会を持つ「タイミング法」だ。一般的に、タイミング法の成功率が高い日は、排卵日の1〜2日前とされている。確率をより高めるために、基礎体温をつけながら、市販の排卵チェッカーで排卵日を予測、「この日に」と取り組む流れが多かった。

 だが、いざ「この日」となると、プレッシャーもあいまって、射精までたどり着けないことが続く。妻の残念そうな顔を見ると、「次こそは」と余計にプレッシャーがかかり、完遂できない。マスターベーションでは射精できるのに、相手が妻になるとなぜか射精までたどり着けない。「このままだと、妻は自分のせいで妊娠できない」。そう思うと、より焦燥感が募った。

 人工授精や体外受精など、性交渉なしで妊娠を目指す手段もあるが、夫婦ともに「できれば自然に授かりたい」という思いがある。一方で、夫婦ともに30代後半という年齢を踏まえると、時間的な余裕があるとは言い難い。

「対処法はないか」とネットで検索し、同様の悩みに対応する場として、医療機関に「男性不妊外来」があることを知る。“不妊治療=女性がするもの”というイメージでいた男性は、受診に対し少なからず抵抗はあったが、「解決できる可能性があるのなら、まずは相談してみよう」と扉を叩いてみることにした――。

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