世の中で「バズっている」記事の分析はもちろん、Z世代の若者を含む受け手に47NEWSの記事を読んでもらい、「どこがダメだと感じるか」をリサーチする日々を続ける。そんな中で、次第に見えてきたことがあった。

「新聞記事とデジタルの記事とでは、読者が『情報をどういう形で受け取ろうとしているか』の感覚が大きく違うということです。以前はアンテナを広げて情報をなるべく多く受け取ること、そしてそのために努力する『能動的な形』を良しとしてきました。でもいま、とくに若い世代は正反対。情報は手のひらのスマホに溢れて、アンテナを広げようものなら情報に溺れてしまう。情報は自分に関係すること、自分事と思えることに絞る必要があるんです」

 そんな受け手はどんな記事を欲しているのか。斉藤さんは、「共感性」と「ストーリー性」という二つの要素が大きなポイントになることに気づく。

「新聞記事のように、知識や教訓が簡潔にまとめられたいわば『説明文』を能動的に受け取ることを欲しているのではなく、読んで共感し、感情が動かされ、自分事として追体験しながら読める『ストーリー』を、受動的に受け取ることを欲しているのだと思います」

 たとえば、その記事に読者が感情移入できる「主人公」がいて、記事はその主人公の目線で、主人公の目の前で起きたことを、時系列で書いていく──つまりストーリーにすることがまず、大事になってくるのだと斉藤さんは言う。

カギカッコの使い方

 では具体的にどうやって、記事を「共感してもらえるストーリー」にするか。そのためにはもちろん、「読みやすさへの工夫」が必要になってくる。

 たとえば、カギカッコの使い方。「『〇〇〇~』と▽▽さんは話した。」と書いてしまうと、受け手は「カギカッコの中が長い場合、その後に主語や述語が来ると、そこを読むまで誰の発言かわからずストレス。テンポも悪い」と感じてしまうケースが多いのだと言う。ここは「▽▽さんは話す。『〇〇〇~』」と書くのがいいというのが、斉藤さんのたどり着いたやり方だった。

「つまりカギカッコの前にその発言者を置き、登場人物の発言の後ろに述語が来ないようにする。そんな小さいところも工夫するようにしました」

 他にも、「出だしは、できれば場面の描写から入る」「段落が変わるたびに『次に何を読まされるのか』がわからず読者がストレスを感じないよう、『まずは』『同時に』『さらに』などの接続詞や、『この点は』『その問題は』などの指示語をやりすぎなくらいに多用する」などのポイントも、効果があったという。

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