![Jパワーが建設中の大間原子力発電所(青森県)](https://aeradot.ismcdn.jp/mwimgs/e/5/840mw/img_e58b32b795341062475d854e3fbde9d662589.jpg)
原発や石炭火力が投資先になっている問題点は後述するとして、まずは脱炭素化が遅れている原因について検証したい。カーボンプライシングで導入されるのは「賦課金」と「排出量取引制度」で、その徴収額を国債の償還財源に充てる仕組みだ。賦課金は、化石燃料を輸入する石油元売りや商社、電力・ガス会社などから、CO2の排出量に応じて徴収する。開始時期は28年度からだ。
一方の排出量取引は、今年度から自主参加の企業でスタートし、参加企業はCO2排出削減目標を設定する。目標より多く削減できた企業は余った削減分(排出権)を市場で売り、目標を達成できなかった企業が排出権を購入することで目標を満たすというもの。自主参加のうえ目標が達成できなくてもペナルティーはなく、効果は疑わしい。
政府が電力会社のCO2排出に対して排出枠を販売し、電力会社が「特定事業者負担金」の形で支払う制度が始まるのは、10年先延ばしの33年度からだ。電力部門の有償化はEUと比べて30年近く遅れることになる。
NPO法人「原子力資料情報室」の松久保肇事務局長がこう指摘する。
「あまりにも遅すぎて、20年代の排出削減に全く寄与しません。一昨年、岸田(文雄)首相は30年までの期間を『勝負の10年』と位置付けましたが、これでは『勝負しない10年』です。さらに、賦課金も特定事業者負担金も格安になりそうです。IEA(国際エネルギー機関)は、炭素価格は1トン当たり30年時点で135ドル(約1万7550円)が必要になると試算しています。現在、他の先進国は1万円を超える価格に設定していますが、日本は10分の1の1千~2千円程度になると推定されます。これでは排出削減のインセンティブにつながりません」
賦課金や特定事業者負担金の徴収を行うのは経産省の認可法人として新たに創設される「GX推進機構」で、経産省にとっては“焼け太り”な状況。だが、これまで脱炭素化に消極的だった経産省主導の制度設計では、日本が掲げる30年度に13年度比46%の削減、50年に実質排出ゼロという目標達成は全くおぼつかない。なぜ、日本はこうも後ろ向きなのか。