他にも地方への関心の乏しさを示した例には、大阪万博の話題がある。9月28日、安倍首相は2025年の万博大阪誘致に、前向きの発言を行った。しかしこれをニュースにしたのは、翌日の「報道ステーション」だけだった。関西では朝刊の一面トップで報じた新聞があるほどのニュースであり、大阪府の試算では予算規模2000億円、波及効果6兆円を見込んでいる。開催の実現までには、パリとの誘致合戦に勝つことや地元の盛り上がり不足の解消なども必要で、まだこれからどう転ぶか、疑問符いっぱいのイベントだが、それでも無視して扱わないというのは腑に落ちない。

●参院予算委員会より都議会一般質問 救いはコメンテーターと地方局

 さて話をもう一度、豊洲に戻せば、10月に入ってもこの問題は大きく取り上げられた。例えば参議院の予算委員会で蓮舫民進党代表が質問を行った10月5日、各局とも夜のニュースは、参議院予算委員会より、東京都議会の一般質問を前においた。こんな馬鹿な話はない。この日また、盛り土についての新しい資料が出たことがあるにせよ、国政より都政を大きく報じるとは合点がいかない。これではニュースというよりも、小池都知事を目玉とした興味本位のワイドショーだ。

 さらに9月28日の「NEWS23」が、「高田馬場での異臭騒ぎ」をトップにおいたのにも首を傾げた。第一報がニュース開始直前に飛びこんだのならまだわかるが、「報道ステーション」がすでに扱っているニュースであり、発生からかなりの時間が経っている。なのに何故これがトップなのか、理解に苦しんだ。

 このように見ていてひっかかることの多い夜のニュースだが、救いがまったくないわけではない。その一つが「報道ステーション」の後藤謙次や、「NEWS23」の星浩の存在だ。例えば後藤は9月27日の「報道ステーション」で、国会での憲法論議に関連して、衆議院の憲法審査会長が自民党の保岡興治から森英介に代わった事実を指摘した。この解説は傾聴に値する。こうした一言が、夜のニュースを救っている。

 さらにもう一つ、地方局の活躍も嬉しい救いである。例えば9月を彩ったニュースに、前にも触れた富山市会議員の政務活動費の不正請求が続々明るみに出た事件がある。この結果、辞職した議員は、県会議員まで含めると15人(10月14日現在)に達した。そもそも10月1日放送の「報道特集」(TBS)によれば、これはチューリップテレビの地道な調査報道が探り出したニュースなのだそうである。地方局がさらに頑張って、ニュースに活力を加えてくれることに期待したい。

つじ・いちろう ジャーナリスト。元毎日放送取締役報道局長、大手前大学教授など。「対話1972」「20世紀の映像」でギャラクシー賞、「若い広場」「70年への対話」で民間放送連盟賞などを受賞。著書に『私だけの放送史』など。

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