公安調査庁が2023年4月、アレフの生野施設(大阪府)に立入検査をした際に確認したヘッドギア。麻原元死刑囚の脳波データを注入できるとされている ※写真は公安調査庁Webサイトより

「グルとの縁を断てば、地獄の最下層に落ちる」

 朝比奈さんにとって最も受け入れ難かったのが、地下鉄サリン事件を“必要悪”とする主張だ。

「セミナーではオウム真理教の事件について学ぶ回もありました。講師は、悪である国家による弾圧に立ち向かうために仕方なかったと考えているようでした。さらにひどいのは、犠牲者に対して因果応報の理論を持ち込んだことです。『彼らは偶然地下鉄に乗り合わせたのではなく、悪いカルマを背負っていたから引き寄せられた』『遺族は背負うべくして苦しみを背負った』と本気で信じている様子でした」

 これ以上関わってはいけない。心の奥に積み重なっていた疑念が確信に変わり、道場に通い始めて5日ほどで脱会を決めた。

 セミナー講師に電話でその旨を伝えると、「一度できたグルとの縁を断てば、地獄の最下層に落ちる」と脅されたが、決意は揺るがなかった。3000回聞くと夢がかなうと謳うCDや、家に祀るか肌身離さず持っておくよう言われた麻原元死刑囚の写真など、アレフから受け取ったものはすべて返却するよう指示された。

 入信時に住所など個人情報を提出しただけでなく、入信にあたっての思いや決意を口にするよう指示され、その様子を動画に撮られたため、脱会後に危険な目に遭わないか怖かったが、幸いトラブルはなかった。

 しかし、脱会から3年半がたった今も、セミナーで講師に言われた言葉が呪いのようによぎることがあるという。

「『下腹部のチャクラに悪いエネルギーが溜まっていて、このままだと子宮がんや不妊になるかもしれない』『あなたの悪いカルマを吸収したせいで、私まで血尿が出た』などと、強烈な話をされました。そんなはずはないと頭では分かっていても、生理痛が重くて気分が沈む時は、本当に病気になったらどうしようと不安になります」

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